研究課題/領域番号 |
20K02112
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
松浦 雄介 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (10363516)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 産業遺産の保存と活用 / ドイツ・ルール地方の産業遺産 / ドイツ・ルール地方の都市再生 / IBAエムシャーパーク |
研究実績の概要 |
本研究では2020年度および2021年度に、イギリスとフランスの旧産炭地で二度の現地調査を行う計画だったが、コロナ渦による行動制限のため一度も海外調査を行うことができなかった。2022年度は行動制限の緩和により、ドイツで二週間の調査を行った。当初の計画に含まれていないドイツを調査地に選んだ理由は次の二つである。第一に、IBAエムシャーパークに代表されるドイツ・ルール地方の都市再生は、文化による都市再生の成功例として世界的に知られるが、のみならず、ルール地方の都市や企業が、本研究がフィールドとする三池炭鉱や同じ九州にある筑豊炭鉱と歴史的なつながりも深いことが、三池炭鉱の歴史を調べるなかでわかったからである。第二に、研究代表者の知り合いでルール地方出身の研究者と、将来的に本研究と同じテーマで日独比較研究を行う着想を得た。共同研究の具体的内容や方向性を構想し、当該研究者に提案するにあたり、直接現地を訪れ、概要を知っておく必要があったからである。 ドイツでは、ユネスコ世界遺産のツォルフェアアイン炭鉱遺産群(エッセン)やドイツ鉱山博物館(ボーフム)、デュースブルク・ノルト景観公園(デュースブルク)などで調査を行った。調査結果から、ルール地方では産業遺産の活用に非常に積極的であると言える。かつての工業施設はさまざまな種類のミュージアム(かつての工業とまったく関係のないものも多い)やイベント施設として生まれ変わり、その場所でさまざまな文化イベントが行われる。IBAエムシャーパークのスローガンの一つ「転換による保存」は、「活用なくして保存なし」、すなわち現在の人々のニーズに応える活用ができなければ、産業遺産の保存は不可能というスタンスと言えるだろう。この活用の徹底性において、イギリスや日本の産業遺産とかなり異なっている。その違いは都市の社会経済的諸条件に起因していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では2020年度および2021年度に、イギリスとフランスで二度の現地調査および国内(福岡県大牟田市および熊本県荒尾市)で数度の現地調査を行う計画だったが、2022年度までにドイツでの調査と1度の国内調査を行ったが、イギリスとフランスではまだ行うことができていない。
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今後の研究の推進方策 |
当初、本研究は2022年度で終える予定であったが、上述の理由によりイギリス・フランスでの調査が未遂行であるため、研究期間を2023年度まで延長し、同年度に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では2020年度と2021年度に一回ずつ海外調査を行い、2022年度に成果をまとめて終える予定であったが、2020-2021年度にコロナ渦のため海外調査を実施できなかった。2022年度に海外調査を一回行ったが、それだけでは完遂することができないため、研究期間を2023年まで延長し、残りの海外調査を実施する予定である。次年度使用額はその調査で使用する。
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