研究課題/領域番号 |
20K02115
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
前川 真行 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (80295675)
|
研究分担者 |
北垣 徹 西南学院大学, 文学部, 教授 (50283669)
白鳥 義彦 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (20319213)
中村 征樹 大阪大学, 全学教育推進機構, 准教授 (90361667)
村澤 真保呂 龍谷大学, 社会学部, 教授 (80351336)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | フランス19世紀 / 統治テクノロジー / 福祉国家 / 自由主義 / ネオリベラリズム / ミシェル・フーコー |
研究実績の概要 |
本科研のテーマとして、19世紀における「統治テクノロジーとその変容」に焦点が当てられることになる。初年度となる本年度は、研究計画全体の準備期間として、19世紀フランスにおける刑事政策、精神医学、教育学等、研究分担者の担当領域に おける研究動向をサーベイし、相互に知識の共有と整理を行った。 まず研究会全体としては、理論的な枠組について関心が向けられることになった。統治テクノロジーの発展という観点からすると、19世紀における転回、とりわけ統治の思想としての自由主義の果たした役割について、その重要性が研究会では議論の中心となった。 個別の論に目を向けるならば、従前より指摘されてきた精神医学と刑事政策の平行関係について、あらためてその重要性が確認された。すなわち、狂気や犯罪についての「実証的」な把握こそが、人間科学の成立にあたって重要な役割を果たしていること、しかもそれがこの19世紀という時代においては、実証医学をはじめとした「知」あるいは「真理の体制」における認識論的な転回と平行していることである。研究会では、そのほか、当時における表象理解の手がかりとして、文学作品の重要性が強調され、それが共有された。 こうした記述から分かるように、この研究会の理論的な背景にはやはりミシェル・フーコーの存在が色濃くその影を落としている。 年度の後半には具体的なテキストをもとに各人の個別発表とそれをもとにしたディスカッションが行われた。取り上げられたテクストとしては、メーストル(『聖ペテルスブルクの夜』)、コンスタン『古代人の自由と近代人の自由』、ル・プレー(『メルーガ家』)、ユゴー(『死刑囚最後の日』)である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
都合七回の研究会が行われ、それぞれの領域における課題共有に努めたが、とりわけ年度の前半においては、移動を伴う活動が大きく制限され、資料閲覧、収集、また海外の研究者との課題共有(研究集会)等の障碍となった。そのため個別研究の進展という点では、事実上、年度後半からの始動を余儀なくされ、それぞれの知見の共有は一部、次年度に持ち越されることになった。
|
今後の研究の推進方策 |
現時点においてふたたび新型感染症の拡大が猖獗をきわめつつあり、本年度についても、研究会や打ち合わせ等については一定の制約のもとでの活動となることは避けられないことが予想される。大規模な研究集会や研究会が困難となった場合は、昨年度同様、研究分担者および研究協力者らを中心に、個別研究の知見および課題共有に重点をおいて研究を進めることとする。 ただし、その成果については、代表者および分担者を中心として論集を発表する計画がすでに進められており、それをもって本科研の中間報告とする予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型感染症拡大のため、とりわけ年度の前半については活動に多大な障碍が生じた。とりわけ移動については、1年を通じてその制約が継続した。そのため今後の研究遂行のための物品費に充当することにした。また人件費についても同様であり、研究会の縮小を余儀なくされただけではなく、大阪府においては実質的に多くの期間において勤務そのものが困難となった。
次年度については、もし移動を伴う研究活動、研究集会等が可能となった場合は、研究者の招聘等、研究会および研究成果の中間報告等を行うこととするが、研究代表者の勤務する大阪府立大学の位置する大阪府では、新型感染症がふたたび拡大する中、研究計画の縮小も視野に入れつつ、今年度同様、zoom 等を用いた遠隔措置によって可能なかぎり代替することとする。
|