研究課題/領域番号 |
20K02117
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
稲葉 昭英 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (30213119)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 貧困 / 低所得 / 家族 / 子ども / ライフコース / メンタルヘルス / 再生産 / 学歴達成 |
研究実績の概要 |
本研究は、貧困低所得層の世代的な再生産が行われるメカニズムを、とくに乳幼児・学童期の家族の内部構造に視点をあてることで明らかにすることを目的としている。2020年12月13日日曜に、研究協力者とのオンライン研究会「定位家族と子どもの発達研究会」を実施した。報告者および報告タイトルは稲葉昭英(慶応義塾大)「子どもにとっての非初婚継続/貧困世帯の経験」、夏天(慶応義塾大大学院)「親不在の経験と高校進学」、周苹(九州大学大学院)「中国農村孤児の苦境とゆくえ」である。なお、研究会参加者は報告者を含めて全員で14名。 このうち、夏天の研究は中国の留守児童の教育達成の問題を農村固有の問題としてとらえるのではなく、「父親の不在が子どもに与える影響の問題」としてとらえ、公共利用データを用いて分析を行った。世帯の経済状態や親の学歴を統制しても、両親の不在は子どもの教育達成に大きな負の影響を与えていた。その分析の結果は現在投稿中である。周苹は中国農村の孤児の問題を事例調査から明らかにし、その解決の必要性を指摘した。稲葉は、日本の公共利用データを用いて相対的貧困世帯に居住する中学生のメンタルヘルスを計量的に分析し、女子において貧困世帯の負の効果が顕著に示されること、これらは親子関係の愛着関係の低さを媒介にして生じていること、また世帯の経済的問題を子どもが認識していることを媒介として生じていることを報告した。稲葉はこの報告を第18回福祉社会学会大会で報告(「貧困と子どものメンタルヘルス」、2020年11月15日、オンライン)すると同時に、論文としてまとめ、現在投稿中である。 他のメンバーもそれぞれ自分の研究を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
もともと、貧困低所得層の世代的再生産に関心をもつ研究者が相互に研究発表を行い、情報交換を行うことを目的としてこのプロジェクトがスタートした。コロナ禍のために、対面での研究会は行えず、12月にオンラインの研究会を行ったのみである。ただし、代表者および研究協力者はデータの分析を進め、投稿中など、成果の発表はほぼ予定通り進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
本当は、対面での研究会をもう少し頻繁に行いたいが、コロナ禍で難しく、本年度もオンラインでの研究会を開催する。当初予定していた出版企画についても、本年度に具体的な作業に入りたいと考えている。次なる計量的データ分析も現在着手しており、めどが立ち次第学会報告および論文投稿を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
もともと、対面での研究会を開催し、メンバーは全国から集まる予定だったため、旅費を多く計上していた。ところが、コロナ禍のために一度も対面の研究会を開催できず、結果的に旅費分の支出が0となった。今年度はできれば対面での研究会を開催したいと考えている。
|