研究課題
3年間の研究期間の中で、貧困・低所得の世代的な再生産に関連をもつ若手研究者と研究会を頻繁に開催し、情報交換およぼ相互の研究の進展を図ることができた。1年間期間延長をしたことで、2023年度にはかなりの業績を出すことができた。研究代表者の稲葉は2本の査読論文をふくむ業績を発表したが、この中ではひとり親世帯における非同居父と子の交流が子に与える影響を明らかにしえたことは重要な意味を持ったように思う。また、ドイツの教育社会学者Fredrick de Mollとの共著論文では日本の子育てをめぐる社会政策の変化と子どもとのかかわりについて分析をおこない、海外の研究者から多くの問い合わせを受けることができた。この研究ではインテンシブ・ペアレンティングと呼ばれる子育てに時間と手間をかける傾向が日本でも強くなっており、とくに中間層以上では子どもにさまざまな習い事をさせ、小学校の低学年から学習塾の利用がすすんでいくことをあらためて提示した。連携研究者である吉武理大は、単著『家族における格差と貧困の再生産』(生活書院)を刊行し、関連分野の研究者から高い評価を獲得している。また、連携研究者夏天は論文「中国における子ども期の「留守児童」経験と普通科高校進学」を『家族研究年報』に発表した。この論文は中国における父不在世帯が子どもにさまざまな不利をもたらしていることを計量的に示したものであるが、中国では子どもの学習に親が責任をもつことが期待されているために、親の不在が子どもに与える影響は日本よりもはるかに大きいようだ。連携研究者Conner Zelmer、鏑木凛はそれぞれフィールドワークを実施し修士論文を提出、修士号を取得した。本研究課題はもともと、貧困・低所得の世代的な再生産に関心をもつ研究者の研究交流及び情報交換を行うことをメインの目的としていたが、この目的は十分に達成することができた。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うちオープンアクセス 5件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)
三田社会学研究
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