研究課題/領域番号 |
20K02121
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
森下 直紀 和光大学, 経済経営学部, 講師 (40589644)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カナダ水俣病 / オーラルヒストリー / カナダ先住民 / 環境史 |
研究実績の概要 |
カナダ水俣病としても知られるアニシナベ先住民に対する水銀公害事件に対して、世界で最初に研究を行なったのは、宮本憲一他による世界環境調査団であった。その後、原田正純(後に花田昌宣)を中心とした調査が定期的に行なわれているが、医学調査以外の分野において、1970年代以降ほとんど実施されていない。本研究では、社会調査を実施することで、アニシナベの生活環境を再度明らかにすることを目的としている。当初の計画では、現代のアニシナベたちの置かれた状況を確認するために、1975年に現地で実施された社会調査内容を踏襲した調査を行なう予定としていたが、新型コロナ感染症の世界的な流行により、出国が困難となり、また現地コミュニティにおいても外部からの訪問を不可としたため、現地調査は断念せざるを得なかった。 そこで、2017年に国内で実施した一連のシンポジウム等におけるナラティブの資料化をおこなった。また、入手済みの史料との照合を踏まえ分析を行なった。この作業によって明らかになったことは、1970年代末のアニシナベとカナダ連邦政府および州政府との交渉において、地域の開発事業者も交渉に参加しており、伝統的な狩猟・採集活動を含む対策が検討されていた可能性が浮上した。結果的に、保留地の移転や狩猟権に関わる対策が実行されることはなかったものの、その交渉における議論の内容は、当時のアニシナベたちや政府関係者が念頭においていた考えを明らかにできる可能性がある。その背景事情等についてさらなる分析作業へと展開していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初予定では、1970年代までの公害発生状況に関する資料を所蔵しているハーバード大学、オンタリオ州の公文書を所蔵しているヨーク大学、連邦政府の公文書を所蔵しているカナダ図書・公文書館において史料の渉猟をおこなう予定であったが、これは実施できなかった。したがって、現地での文献調査は断念し、国内に利用可能な史料の探索に努め、入手可能な史料については分析作業を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の性格上、文献史料調査とともに、ナラティブをベースとした質的研究手法に基づき実施される。個別の生活環境に関する聞き取り調査、連邦政府や州政府の各種制度の検証を過去の事例と比較検討することで、研究目的を達成する。しかしながら、現在の感染症蔓延状況において、現地調査が困難であるため、これまでも関係者との連絡手段として用いていたSNS等を用いた聞き取り調査の方法を現在模索中である。また、蔓延状況が改善されれば現地調査を主体とするが、IoT技術を用いた方法論も並行して検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、新型コロナ感染症の蔓延状況により、国内外で予定していた調査および会議目的による使用が無かったためである。コロナ感染状況の改善に伴って、渡航調査を実施するとともに、状況が改善されなかった場合でも可能な限り予定された研究を実施するために、非対面において調査活動を行なう予定としている。こうした調査形式においても、対面と同様に調査協力者に謝金支出を計画している。
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