研究課題/領域番号 |
20K02123
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
川田 耕 京都先端科学大学, 経済経営学部, 教授 (50298676)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 愛情の歴史 / 歴史社会学 / 文化社会学 |
研究実績の概要 |
2020年度、論文として発表したものとしては、以下の3点がある。 A・「国家と女神:近世中国における母権的共同体の想像」松田素二ほか編『日常的実践の社会人間学』山代印刷株式会社出版部、2021年3月。B・「瓜と洪水:日本における七夕伝説の分析」『人間文化研究』45号、2020年11月。C・「子どもたちの七夕祭:その歴史と心性」『京都先端科学大学経済経営学部論集』2号、2021年3月。また、研究成果の一部を以下のサイトに公開した。D・「七夕あれこれ」(https://tanabatahomeblog.wordpress.com) A論文は、交付申請書の「補助事業期間中の研究実施計画」(以下、「計画」と略)の「1」の前半部分に記した研究の成果であり、近世中国における女神信仰のなかに、父権的な国家体制の裏返しとしての、母権的な心性を明らかにしたものである。これは従来の中国に女神についての研究にはみられない視点であり、近世中国にける愛情の歴史の重要な一端を示すことができたと思われる。 B論文とC論文とは、「計画」の「2」の研究の成果である。B論文は、日本に広く分布した「瓜型」の七夕説話についての分析で、そこに異性愛的な愛情への希求と失望、ならびに母権的な力の横溢をみいだした。C論文は、七夕祭のなかでも近世後期から明治・大正期にかけての子どもたちが主体となる七夕祭について網羅的に取り上げたもので、この祭のなかに、共同体における大人たちの子どもたちへの「やさしさ」の心性のひろがりを明らかにしたものである。また、Dは、全国各地の七夕祭の状況について調査したことを調べたことを逐次公開しているものである(このサイトは現在も更新中である)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に行う予定として「計画」に記したことはすべて実行し、研究論文の発表についても、完全に計画通りに行うことができた。ただし、科研費申請時(2019年秋)には予定していた中国語圏での文献調査・フィールドワークについては、「計画」段階(2020年4月)に予想していた通り、コロナ禍による出入国の制限のため行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も交付申請書の「計画」に記した通りの研究を中心に推進するとともに(下記A・C)、七夕の研究については追加的に研究を進める(B)。具体的には、以下の通りである。 A:中国において異性愛的な愛情の語りの母型の一つとなってきた「才子佳人」型ならびに「長恨歌」系統の演劇と伝承について、日本との比較の視点も交えながら、調査と分析を行う(2021年度に実施し同年度中ないし翌年度に論文としてまとめ発表する予定)。 B:七夕についての研究をより包括的な視点から再考するとともに、近現代日本においてどのような社会的なダイナミクスのなかで七夕をめぐる物語が変遷したのか、についての調査と分析を行う(2021年度に実施し、同年度中に研究会で発表し、同年度ないし翌年度中に論文としてまとめ発表する)。 C:以上の具体的な研究ならびに本研究以前の成果を取りまとめて、より包括的な中国と日本における愛情の比較歴史社会学をとりまとめる(主に2021年度ならびに2022年度に研究を実施し、2022年度ないしその後1年ほどで研究成果を公表)。 D:中国語圏への渡航が可能になれば、現地で文献等の調査を2021年度中に行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は中国語圏での文献等の調査ができる可能性を探っていたが、コロナ禍のために結局渡航できずに終わった。そのため「旅費」ならびに渡航先で使用予定であった「物品費」などを使用する必要がなくなった。2021年度以降、可能になり次第、中国語圏への渡航を予定しており、そのために予算を使用する計画である(もしも2021年度も引き続き渡航が不可であれば、2022年度に予定)。
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