研究課題/領域番号 |
20K02127
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
山中 速人 関西学院大学, 総合政策学部, 名誉教授 (80191360)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 災害記憶 / コミュニティラジオ / メラピ火山災害 / 阪神・淡路大震災 / 防災番組 |
研究実績の概要 |
日本側とインドネシア側双方で前年度に実施した、被災地域における質問紙調査によって得られたデータの分析作業が22年度に進められ、その結果報告を関西学院大学総合政策学部学術誌『総合政策研究』に掲載することができた。以下、その書誌的データである。山中 速人、マリオ・アントニウス・ビロウォ、セシリア・サンティ・プラハルシウィ、 中川崇「災害記憶継承における地域メディアの役割:インドネシア日本共同研究 1 次報告」『総合政策研究』66号(2023年3月)pp.1-12.報告論文の主な内容は、以下のとおりである。 2021年以来、アジアの災害多発地の一つであるインドネシア・ジャワ島のメラピ火山災害被災地周辺の大学(Universitas Atma Jaya Yogyakarta)およびコミュニティ・ラジオ局(Jaringan Radio Komunitas Indonesia)と共同で、災害記憶継承のための実験的番組の制作と評価を行い、災害記憶の継承における地域メディアの有効性を明らかにする研究を開始した。研究はCOVID19による困難と遅延が生じたにもかかわらず、関係者の努力によって継続された。本論文は、現地における一次調査の報告であり、同時に、その調査結果をもとに、災害記憶の継承について阪神・淡路大震災の被災地との比較を考察した。比較の結果、災害記憶の情報源としては、家族・親族を情報源とする傾向は、日本・インドネシアに共通して高かった。災害記憶を伝える効果的な手段については、テレビ・ドキュメンタリー映像、学校教育がともに高い比率を示した。ただ、日本では被災者による語り、インドネシアではオンライン・メディアが支持される傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インドネシア側カウンターパートであるメラピ火山周辺のコミュニティラジオ局の機能回復がコロナ禍によって遅れたため、2022年度内における、火山災害の記憶継承のための実験番組の制作が大幅にずれ込み、当初、計画していた22年度内の番組完成が困難となった。よって、番組評価を行うための日本からの研究者派遣による番組反応・評価にかかる共同調査の実施が23年度にずれ込むこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍からの回復と現地コミュニティラジオ局の活動の正常化をまって、22年度に完成できなかった災害記憶継承のための実験番組を23年度上半期に完成させたい。そして、23年度のモンスーン雨季明けをまって、日本から研究者派遣と現地研究者(カウンターパート)による番組評価共同調査を実施すべく、準備を進めている。 また、現地コミュニティラジオ局/カウンターパートの研究者を日本側に招聘し、阪神・淡路大震災被災地のコミュニティラジオ局との研究交流を実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による調査現地における調査困難な状況が継続し、また、現地カウンターパートであるコミュニティラジオ局の制作態勢の回復が遅れたため、22年度に計画していた災害記憶継承のための実験番組の制作がおくれ、また、日本側研究者の現地派遣による共同評価調査の実施が23年度にずれ込むこととなった。しかし、コロナ禍による混乱からの回復が進みつつあり、23年度における実施が進捗する見込みがたったため、23年度上半期に番組制作を行い、下半期に研究調査を実施する予定である。また、24年1月の阪神淡路大震災の祈念行事にあわせて、現地からカウンターパート研究者・放送関係者を日本に招聘し、記憶継承番組研究についての国際研究会議(ワークショップ)を実施する予定である。 予算の使用用途については、現地放送局が行う番組制作の制作費(日本側カウンターパートのFMYYを経由して支払う予定)、下半期に予定している日本側研究者の現地訪問調査にかかる旅費、来年1月に計画している国際研究会議への現地研究者等の招聘費用として使用する予定である。
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