2019年と2020年、阪神・淡路大震災被災地にある関西学院大学総合政策学部が災害後世代における災害記憶の継承について意識調査を実施した。その調査結果の一つとして、災害記憶の継承における地域メディアの重要性が判明した。そこで、2021年、震災記憶を継承するための2つの異なったタイプの放送番組を被災地のコミュニティ放送局FMYY(神戸市長田)と共同制作し、番組評価調査を実施した。 それらの研究と並行して、2021年以来、アジアの災害多発地の一つであるインドネシア・ジャワ島のムラピ火山災害被災地周辺の大学(Universitas Atma Jaya Yogyakarta)およびコミュニティ・ラジオ局(Jaringan Radio Komunitas Indonesia)と共同で、災害記憶継承のための実験的番組の制作と評価を行い、災害記憶の継承における地域メディアの有効性を明らかにする研究を開始した。研究はCOVID19による困難と遅延が生じたにもかかわらず、関係者の努力によって継続された。本論文は、現地における一次調査の報告であり、同時に、その調査結果をもとに、災害記憶の継承について阪神・淡路大震災の被災地との比較を考察した。比較の結果、災害記憶の情報源としては、家族・親族を情報源とする傾向は、日本・インドネシアに共通して高かった。災害記憶を伝える効果的な手段については、テレビ・ドキュメンタリー映像、学校教育がともに高い比率を示した。ただ、日本では被災者による語り、インドネシアではオンライン・メディアが支持される傾向を示した。
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