研究課題/領域番号 |
20K02130
|
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
清水 奈名子 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (40466678)
|
研究分担者 |
飯塚 和也 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20344898)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 原発事故 / 北関東 / 被害の不可視化 / 住民運動 / 測定調査 |
研究実績の概要 |
本研究では、相互に関連した次の3つの目的を設定している。第一に、北関東の低認知被災地において続けられてきた住民活動と、活動によって明らかになった被害の実態を記録することである。第二は、活動の成果として市民が要望する対策が実現した事例と、実現しなかった事例を比較することで、住民活動の成果と課題を検証することである。第三に、①と②によって浮かび上がる事故被害の実態、並びに住民活動が直面する課題が、国際人権法上のいかなる権利に関わるのかを明らかにすると同時に、権利回復のためにはどのような対策が必要なのかを検討することである。 これらの研究目的を達成するために、研究代表者(清水)及び分担者(飯塚)の所属機関が所在する栃木県を主要なフィールドとして、2020年度は下記の調査と研究活動を実施した。第一に、研究代表者は2018年に引き続き、2020年9月に栃木県那須塩原市と那須町の住宅地域において土壌、落ち葉、植物などの測定のためのサンプルを30点採取し、研究分担者並びに研究協力者とともに、測定結果に関する研究会を開催して分析を行った。第二に、栃木県内で原発事故後の権利回復を続けている関係者からの聞き取り調査を実施した。第三に、栃木県が公開している、原発事故後の除染、東京電力への損害賠償請求当に関する資料を収集し、分析を行った。第四に、現時点での調査・研究の成果を依頼論文、公開研究報告会、国際会議において発表し、関係者との意見交換を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はコロナ禍の影響を受けて、年度当初は予定が遅れていたが、今年度中に実施を計画していた調査はほぼすべて終えることができた。予定していた聞き取り調査のみ、対象人数が計画より少なくなったものの、今後はオンラインツールなどを活用して計画通りに進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度には、アクセス権、健康を享受する権利に関わる重要な活動の事例として、健康調査に関する住民活動関係者への聞き取り調査を行う。栃木県の汚染状況重点調査地域の土壌等の放射線量測定は、継続して実施する。さらに栃木県自治体関係者に、前年度の資料調査によって明らかになった課題について聞き取り調査を行うことも予定している。 2022年度には、栃木県の汚染状況重点調査地域の土壌等の放射線量測定は継続して実施しつつ、過去3年間の計測結果の取りまとめと分析を行う。関東地域で甲状腺検査を実施している関東子ども健康調査支援基金の検査会場での参与観察と、受検者を対象とした無記名アンケートについては コロナ禍の影響を考慮しつつ、可能な場合には対面で、実施困難な場合にはオンラインでの関係者への聞き取りと、ウェブアンケートの形式で実施する。同時に関連する国際人権法上の権利に関する先行研究の調査・分析を進める。過去3年間の調査結果を踏まえて、低認知被災地における原発事故被害対策と住民活動に関する論文の執筆、投稿を行う予定である。 2023年度前半までに、過去3年間に行った聞き取り調査、測定調査、資料分析の結果を、 調査報告書としてまとめて刊行するためのデータ整理と編集作業を行うことを予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍を受けて参加を予定していた学会などがオンライン開催となり、予定していた旅費が使用できなかったこと、また聞き取り調査の音声の書き起こし、データ整理などのための謝金の支出がなかったため。
|