研究課題/領域番号 |
20K02132
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
水津 嘉克 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (40313283)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 死別 / 物語論 / 排除 |
研究実績の概要 |
今年度は、これまで「死別」経験をめぐるインタヴューや手記集などをもとに発表してきた論文を、一貫した問題意識と理論枠組みの中で再検討し、研究の方向性を定めていく作業を行った。 具体的には、2019年の日本社会学会での発表の際に提示した“分析枠組みとしての自己「物語」”概念を用いながら、これまで発表してきた論文内容の再検討、そしてそこで用いてきたデータ等の見直し(必要に応じてオリジナルのトランスクリプトデータにも立ち戻り)作業を進めた。 その一部として行ったのが、2020年10月日本社会学会大会における発表であり、2015年に執筆した論文(「『人称態』による死の類型化再考 ─多様な死・死別のあり方に向き合うために」 有末賢・澤井敦(編著)『死別の社会学』: 144-172,青弓社.)での議論を、自己「物語」論の文脈で再検討する内容となっている。 もう一つ試みているのが、これまでの悲嘆研究を物語論的な視点から批判的に再検討する作業である。この課題は、2008年に発表した論文(「「死別」への社会学的接近のために ー「段階論」の批判的検討からー」 崎山・伊藤・佐藤・三井(編) 『<支援>の社会学 現場に向き合う思考』: 62-86, 青弓社.)での積み残したままになっていたものでもあり、この10年行ってきた自死遺族の方達へのインタヴュー行為で得たものを踏まえ、理論的にも実践的にも説得力のある内容での論文を発表できるよう執筆作業を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要でも書いたように、これまでの研究成果を踏まえつつ、これまで執筆してきた論文間に生じている矛盾を言語化し、理論的には曖昧なままにしてきた部分を整理し、自己「物語」という一貫した分析枠組みのなかにそれらを位置づけ、理論的にも実践的にもより説得力をもたせるべく作業を続けてきた一年であった。 当初は、ゴールもみえない状況であったが、この一年の作業の中でパズルが埋まっていくように少しずつ前進している実感を得られるようになったのが、今年度の後半である。この状況を維持しつつ、よりゴールに近づける作業を来年度も続けていきたいと考える。 具体的には、これも繰り返しの記述になるが、トランスクリプトを再度検討し、それを分析するための「自己物語」を分析概念としてより洗練化させることが必要となる。
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今後の研究の推進方策 |
この1年で続けてきた作業をより押し進め、具体的な成果物としてまとめていくのが今年度の最大の目標となる。 またそれと同時に、今まさに生じている社会の大きな変化の中で、自分が行ってきた調査や研究がどのように位置づけられるべきなのかを再考する時期にもきていると考える。 当然のことではあるが、上記に二つの作業を進めていくうえで必要な調査も粛々と進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナウィルスの影響で、国内調査や学会への参加などが出来なかったためである 。 繰り越した研究費は、調査のための費用と調査データ分析ソフト(MAXQDA2020)購入などに使用する予定である。
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