本研究「外国人の「権利獲得・擁護」モデルの「多文化共生」創出にむけた研究」は、大阪府東部自治体をフィールドに設定し、「相互理解・尊重」モデルの「多文化共生」の限界を指摘し、外国人の「権利獲得・擁護」モデルの 「多文化共生」の理念と施策の創出をはかるものである。 2023年度は前年度に引き続き、新聞報道や文献資料等を掘り起こし、1945年以前より現在に至るまでの同市における在日朝鮮人、外国人の暮らしを明らかにすることにつとめた。さらには、同自治体における在日朝鮮人の社会運動団体が発行した運動の資料や写真、ビデオ録画等のデジタル化を行い、運動をさまざまな視角からより多面的に把握することで研究に資するようした。これらデジタル化した資料等については、同運動体のSNS等で発信し、社会的に還元することにつとめた。 さらに、前年度より実施してきた同自治体における在日朝鮮人による社会運動とその到達点や未達点、また、行政等の外国人施策の現況やその課題等を検証することを目的とした公開研究会について、そこでのヒアリングの内容を文字化し、各研究会でのスピーカーにその論文化を依頼した。さらに、上述の資料等にて明らかにした1945年以前より現在に至るまでの同市における在日朝鮮人、外国人の暮らしなどについても論文化し、以上の論文をとりまとめた報告集を書籍として発刊した。これにより、「相互理解・尊重」モデルの限界の乗り越えを企図しつつ、同市において外国人の「権利獲得・擁護」モデルの 「多文化共生」の理念と施策がいかに創出されようとしているのか、その経緯を明らかにし、行政だけではなく当事者の運動団体が果たした役割が大きかったことをも明らかにした。
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