研究課題/領域番号 |
20K02139
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研究機関 | 城西国際大学 |
研究代表者 |
魚住 明代 城西国際大学, 国際人文学部, 教授 (90228354)
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研究分担者 |
廣瀬 真理子 東海大学, 教養学部, 客員教授 (50289948)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ドイツ / オランダ / 福祉国家 / キリスト教民主主義 / 社会福祉行政 / 公私関係 / 家族主義 / 欧州大陸 |
研究実績の概要 |
本研究の初年度の計画は、基本文献研究と現地調査の準備であった。しかし、予想以上に深刻化した新型コロナウイルスの感染拡大により、今年度の文献研究の方法は、専らインターネットを利用して、各自が欧州の専門ジャーナルなどから論文収集を行う事が中心となった。また感染防止のために、対面での研究会を開催できなかったことから、オンライン研究会に切り替えて、年度内に研究会を7回開催した。そこでは、例えばドイツとオランダの救貧行政の歴史を社会史の文脈から繙き、各国の特徴を明らかにする研究を行った。 研究計画のもう一つの柱である、2年目に実施予定の現地調査の準備に関しては、パンデミックの影響で渡航の時期について目途が立たないことから、令和2年度には具体的な準備計画を立てることが出来なかった。引き続き、今後の研究計画のなかに位置づけていくこととした。 他方でオンラインの機会が増えたことにより、本研究に思いがけない収穫もあった。つまり、欧州の大学や研究機関が主催するオンラインによる研究会・シンポジウムが、欧州内に限らず、全世界から聴講できるようになったことで、費用の負担なくそれらに参加でき、研究面に多くのヒントが得られたのである。例えば、欧州の福祉国家における新型コロナウイルスによる社会的影響とその対応策をめぐる幾つかの比較研究のシンポジウムでは、北欧諸国・英国・大陸諸国の其々の伝統に基づく問題の把握の方法や、政策の多様性が見いだせた。こうして発見した新たな視点を、これから現地での実証研究に活かせるように、分析・整理を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように、新型コロナウイルスの感染拡大により、令和2年度の本研究活動は、オンラインで開催する研究会とeメールでのやり取りに制限されたため、対面方式での研究会ほど活発に意見を出し合えるまでに至らなかった。また、欧州への渡航も困難な状況となり、実証研究(現地調査)の具体的な準備が進められなかった。これらの点から、初年度の研究の進捗状況は、決して順調とはいえなかった。 しかし、各自が行った基礎的な研究については、とりわけ社会史研究から見いだせるドイツとオランダの福祉国家の構築の背景とその法政策への影響について、興味深い指摘が見いだせた。こうした歴史研究は、次年度にも継続して行う予定である。 実証研究の準備については、今後、新型コロナウイルス問題が収束に向かい、欧州への渡航が平常時のスケジュールに戻り次第、現地調査が実施できるよう、現在は、ドイツとオランダの研究者や関連する機関との連絡を維持しながら、調査の枠組みについて検討している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、「大陸型」福祉国家の特徴と多様性について、ドイツとオランダの事例を通して明らかにすることであり、文献研究と実証研究(現地でのヒヤリング調査)を並行して行うという当初の計画に沿って研究を進めている。 次年度も、引き続き文献研究を進めていくと共に、2か月に1回程度のペースで、対面またはオンラインでの研究会を開催し、ドイツとオランダの比較研究を深めていく予定である。また、本研究の内容に近いテーマで開催される欧州のオンライン研究会やシンポジウムを積極的に聴講する予定である。 4年間の研究期間のなかで、2年目と3年目に予定している実証研究(現地調査)は、丹念な聞き取り調査を通じて、「大陸型」福祉国家の実態と課題を明らかにするという目的をもち、本研究の核心部分に当たるともいえる。そのため、研究期間があと3年残されていることから、仮に現地調査の時期を1年延期しなければならないとしても、新型コロナウイルスの感染拡大による渡航規制が緩和され次第、具体的に進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由として、以下の3点があげられる。第1に、令和2年度の前半は、突如コロナ禍に直面したことにより、通常の校務が大幅に変更され、オンライン化への対応を迫られることになった。そのため、研究会のスタートが遅れ、研究会も専らオンラインで実施する運びとなった。また、学会も全てオンライン形式で開催されたため、国内旅費を使用する機会がなかったこともある。第2に、在宅勤務が続いたため、勤務校に赴いて研究費申請が出来るようになるまでに時間を要した。その他にも、洋書の購入には平常時でも時間がかかるため、コロナ下での発注から入荷までの期間に時間的余裕があるかどうかについて不明であった。そこで初年度は、文献サーベイに重点を置くこととし、研究対象国の主要な研究ジャーナル等の資料検索を中心に行った。その間に書籍購入リストを作成し、書籍発注時期を次年度に回す方針とした。第3に、海外調査が本研究の中心であるため、その調査年次に予算を十分充てられるよう、本年度の予算執行分を若干控えたこともある。 以上のように、コロナ下での研究遂行のために次年度への繰り越し予算が生じたが、その使用計画は明確に予定されており、執行準備を進めている。
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