研究課題/領域番号 |
20K02140
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
稲葉 奈々子 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (40302335)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 移民 / 女性 / 非正規滞在移民 / 社会運動 / フランス |
研究実績の概要 |
2022年度は非正規滞在の女性による正規化を求める運動についてのインタビューをフランスで実施した。比較の視点を導入するために日本でも非正規滞在の移民女性に対してインタビューを行った。同時に資料を収集した。フランスにおいては、とくに家事労働に従事してきた非正規滞在移民女性のライフストーリー・インタビューにより、ラディカルな運動のなかで、女性が運動への参加をどのように動機付けられてきたのかを考察した。 占拠を手段とするラディカルな運動だが、正規化を求める運動や、住宅への権利を求める運動は、かならずしもフェミニスト団体によって支援されているわけではない。むしろスカーフを着用して「女性の権利」を訴える移民女性の運動は、フェミニスト団体に批判されることすらあった。移民女性は、むしろ広く基本的人権を訴える市民団体や労働組合の支援を受けていた。 日本の場合、入管収容の恣意性が高いため、非正規滞在者が公共空間に姿を現すこと自体が不可能である。しかし移民女性は、生活世界のなかで日本人支援者とつながることで、公共空間に姿を現し、政治的な発言ではないが、生存のための日常的な活動の実践が政治的な表現となっていた。単身の非正規滞在移民女性の場合、在留資格ある女性よりも性暴力の被害を受けやすいが、日本の場合も、フェミニスト団体が移民女性を支援することはなく、フランスと同様に市民団体や労働組合の支援を受けていた。 非正規滞在の移民女性に対してフェミニスト団体が沈黙している理由は、フランスではポストコロニアリズムに依拠する移民女性当事者のフェミニストによる研究が多く存在する。マジョリティ女性に属するフェミニストの支援の不在は、単なる表面的な事象ではなく、フェミニズムが内在化している理論的な問題として今後考察が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大により1年半にわたり海外渡航ができなかったため、社会調査の実施が遅れた。そのため予定していた学会報告を期間内に行うことができず、本研究課題の終了期間も1年延長した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は最終年度にあたる。データを補足するための調査を実施しつつ、研究課題を最終的にまとめるために学会報告を行い、論文を執筆する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症対策の影響で海外渡航ができず、社会調査を予定どおり実施できなかったため、調査の計画が後ろ倒しとなり最終年度に予定していた学会報告を行うことができなかった。2023年度にフランスおよび日本で補完的調査および予定していた国際学会での報告を行う。
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