研究課題/領域番号 |
20K02143
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
安藤 丈将 武蔵大学, 社会学部, 教授 (50434220)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 社会運動 / 食と農 / 香港 / 民主化運動 / パーマカルチャー |
研究実績の概要 |
2021年度の具体的な研究成果としては、以前に行っていた現地調査の成果をもとに、最近の文献の調査を加えて、香港史研究会で「広深港高速鉄道反対運動のローカリズム」という報告をした。ここで受けたコメントを受けて修正した論文を、倉田徹、小栗宏太編『香港と「中国化」:受容・摩擦・抵抗の構造』 の一章に寄稿することができた。この論文では、「中国化」とそれに対する異議申し立てとして解釈される傾向のある返還後の香港の社会運動を、「開発」とその反作用という観点から読み直した。 この論文の執筆をきっかけに、中国がその原因の一端になっているが、それに限られない、北東アジアに共通する問題を理解する枠組みの構築の必要性を感じ、その作業も進めてきた。その一つが「開発」であり、従来、香港は北東アジアの中でも、正式な「国家」ではないことからその他の「開発国家」とは異なる扱いを受けてきた。しかし、返還後の大陸経済との一体化の中で、より集権的な成長政策が展開されており、開発という枠組みの再評価がなされている。私自身の研究の中で、成長イデオロギーの共有や民主主義の制限という観点から開発主義を捉え直すことで、香港にもこの枠組みは有効であることがわかった。 最後に、フードアクティヴィズムの理解枠組みに関しては、「食べ物運動と政治:「不可視化」を超えて」『農業と経済』でも取り組んでおり、この点は、2022年度以降も現地調査に行けない状況の中でもできることとの一つであると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度の本プロジェクト開始以来、コロナウイルスの感染拡大のために香港に渡航することができず(渡航しても14日間の待機を要する)、現地調査をすることができていない。また、2020年に施行された香港国家安全維持法(国安法)の影響も見通すことができず、コロナと国安法以前の2019年度中に申請した書類の通りに調査をするのが難しい状況が続いている。これが遅れの最大の理由である。その分、研究書を読みながら、歴史研究を整理し、理論的な枠組みを検討するなどをしてきたが、調査ができていないので、「遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は現地調査に加えて、香港から農民グループを招き、日本の地域の農民、消費者グループとの交流の機会を設定する予定であった。しかし、コロナウイルスの感染状況も鑑みて、来年度に延期することにした。香港の現地調査に関しては、依然として慎重を要する状況が続いている。特に国安法に関しては、私自身だけでなく、取材相手に影響が及びかねないので、慎重に取り組みたい。代わりに、歴史研究を整理し、理論枠組みを検討し、すでにある調査の成果をもとに、パーマカルチャーのフードアクティヴィズムに及ぼす影響を考察していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの感染拡大などもあって、現地調査をすることができず、次年度使用額が生じた。調査が可能になって以降に旅費として使用する予定である。
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