研究課題/領域番号 |
20K02145
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鈴木 規子 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (50610151)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Brexit / EU / 民主主義 / フランス / 市民権 / 若者と政治 |
研究実績の概要 |
昨年度取り組んだ日本とEUのFTAとBrexitの影響に関する論文が収録された、Brexitの影響についての特集号(International Studies)が4月に発表された。 今年度もCOVID-19の影響で海外調査を実施できなかったため、海外の研究者とオンラインで研究交流を行う中で、政府の感染対策とそれに対する国民の反応について日本・ヨーロッパ(フランス・ドイツ・ポーランド・ハンガリー・ギリシャ)・北米(カナダ)・アジア(中国・台湾・タイ・カンボジア)の10カ国にのぼる研究者によびかけて、国際比較研究のための英書出版を企画した。8月にオンライン研究発表を行い、編者として原稿をとりまとめた。コロナ危機では自由で民主的な国でも政府が感染対策のため国民に行動抑制を強いたが、国民は政策をどのように考えて行動しているのか民主主義の観点から研究した。これは本研究にとって2つの点で有益であった。①イギリスでは外から来る移民の制限を訴えてEU離脱派が支持を集めたが、不確実な状況では国民が何に基づいて判断し行動するのか考えることにつながった。②COVID-19感染拡大は、ボーダーレスなヨーロッパに再び国境管理をもたらし、感染状況の違いにより各加盟国の判断がEUの共通政策よりも重視されていることを明らかにした。BrexitはEUからコントロールを取り戻す決断をしたBrexitに続いて、EU法違反が指摘されるポーランドやハンガリーでも離脱が懸念されているが、同国の研究者と交流することで国内事情への理解を深めることができた。 市民権については、若者の政治参加について論文を執筆した。またフランス教育学会シンポジウムで、フランスで起こったムハンマド風刺画を公民科の授業で使った教師が殺害された事件について討論者として議論を行い、移民社会フランスの現状をアップデートすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度もCOVID-19の影響で海外調査研究を実施することができなかったため、計画通りに研究を進めることができなかった。日本で文献調査を中心に研究を進め、在仏イギリス人への聞き取り調査のテープ起こしをするなどデータ収集を行い、イギリス人の証言を集めた。今後調査を予定している都市での拠点を作るため、当地の大学関係者と連絡を取り合っている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は政府の海外渡航がやや緩和されたので、7月にフランスへ1週間程度滞在して、調査予定地のリールで対面で在住イギリス人や自治体などに聞き取り調査を行う予定である。2020年度と21年度は同じ都市を訪問する予定であったがかなわなかったので、今後のCOVID-19の感染状況をみて、できれば後半にドルドーニュ地方に行きたいと考えている。もし現地調査が難しい場合は、オンライン会議でイギリス人たちに聞き取り調査を行うことも考える。 オンライン会議によって海外の研究者と知り合う機会が増えたので、ベルギーやフランス、キプロスなどの研究者との人脈を作ることができた。このことは、現地調査を再開するときに拠点となるだろうし、EU市民権の付与や剥奪の問題を考える際にEU市民権の販売を行っているキプロス状況から新たな気づきを得られそうである。また、ブリュッセル早稲田オフィスとコンタクトがとれたので、海外で研究発表を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外調査のための出張がコロナ禍による海外出張制限でできなかった。今年度は海外出張を計画しているので、今年度については計画通り実施できるので、それに加えて昨年度分の調査も準備する。
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