研究課題/領域番号 |
20K02148
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
宮本 直美 立命館大学, 文学部, 教授 (40401161)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 文化社会学 / 音楽社会学 / 娯楽 |
研究実績の概要 |
本課題は近代におけるグローバルな娯楽産業の形成を考察するものだが、2021年度は特に19世紀後半から20世紀初頭の欧米の「ショー」に分類される娯楽を中心に調査・研究を行なった。 劇場で催される「ショー」は、ミンストレル・ショー、ヴォードヴィル、バーレスク、ミュージック・ホール、レヴューなどが緩やかなジャンルとして知られている。これらはそれぞれに特徴と客層を異にするタイプへと分化していった。中でもバーレスクとほぼ同義であったヴォードヴィルを、女性を含むファミリー向けに再編したT.パスターの業績は大きく、それがブロードウェイのショーを徐々に規定することになった。バーレスクに比べて性的な表現を控えたバラエティ・ショーは「健全な」ショーとしてより多くの観客を集め、商業的に成功していくことになる。こうした土壌の上にヨーロッパからのレヴューが根付き、1920年代の世界的な流行に繋がったことが明らかになった。 またそうした舞台上のショーの展開と連動して、劇場から生み出されるポピュラーソングの流通が、シート・ミュージックからレコードに代わっていく過程の分析も行なった。それは単にメディアの変化にとどまるものではなく、アマチュアが演奏するための音楽から、聴くための音楽へと変わる音楽的特徴の変化にも影響を与えた。 2021年度は、世界的に流行したレヴューを日本で採用した宝塚少女歌劇について、レヴュー導入前の前提となる状況について考察した部分を論文として公表した。 さらに、劇場という固定的な場と、その地理的範囲を超える流通という点に関しての考察を進め、その一部を公表すべく準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響で海外での資料調査がまだできないため、当初予定していた19世紀のロンドンの実態に関する研究が後回しになってはいるが、ヨーロッパからアメリカへの影響と変化という娯楽のグローバル化については予定通りの研究を進められている状況である。成果の一部を予定より早く発表することで全体の進捗状況を調整している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は引き続き、欧米の都市娯楽の調査と研究を進め、ショーという形態の近代的な娯楽がどのように合理化し、標準化し、グローバル化したのかという問題について考察する予定である。実態の調査だけではなく、そこから社会学的な理論に向けた考察も併せて行う。 複数の雑多な娯楽ショーの成立とその意味については、2022年度中に整理して公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、当初予定していた海外調査および国際学会参加のための出張ができなかったため。海外資料調査については、資料取り寄せ等の代替手段を講じる予定である。
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