研究課題/領域番号 |
20K02151
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
福井 信佳 関西医科大学, リハビリテーション学部, 教授 (50727708)
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研究分担者 |
大歳 太郎 関西医療大学, 保健医療学部, 教授 (40336483)
橋本 有理子 関西福祉科学大学, 社会福祉学部, 教授 (70368413)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 発達障がい者 / 高学歴 / 職場定着 |
研究実績の概要 |
発達障がい者における一般就労について,特に高学歴,IQが高いことは障害が周囲に理解されない場合があり就労上の課題となることが指摘されているが,有効な対策の構築に至っていない.そこで筆者らは,高学歴発達障がい者(以下,高学歴者)に対して就業環境と満足度に関する調査を実施し,コミュニケーション,対人関係および仕事のマッチングに関する課題のほかに,高学歴者の場合には「周囲からの期待度が高すぎる」という新たな課題があることを明らかにした.この新たな課題に対して筆者らは,障害を開示して就職している高学歴者の中には,この課題をうまく回避し,職場定着可能なヒントがあるのではないかと考えた.今回障害を開示して就職している高学歴者に対してアンケートを実施した.本研究の目的は,周囲からの期待が高すぎるという課題の解決に対して好影響を与える要因を明らかにすることである. 単純集計結果では,平均調査時年齢は平均31歳で,学歴は大学卒業以上の13名で,障害の重症度は軽度の者が多数であった.新たな課題であった「周囲の期待を負担に感じなくて済む」に対して正の相関を認めた要因は,「コミュニケーションがとりやすい」,「自分のペースで仕事ができる」,「肩身の狭い思いをしなくて済む」,「病気のことを言われなくて済む」,「賃金や昇進で不利な扱いがない」であった.その他の項目については有意差を認めなかった. 高学歴者にとっては,やはり障害を開示することによって疾病や障害に対する理解が得られ,職場内でのコミュニケーションが良好となれば対人関係が良好に保たれ、安心して仕事がしやすくなると考えられた.その上で,自分に合った仕事が自分のペースで可能となり,将来の賃金や昇進についても前もって相談しやすい環境があれば,周囲から過度な期待を強いられることなく働きやすい環境になるのではないかと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度に入ってからは順調にインタビューが進みつつあるが、昨年度はコロナ禍におけるデータ収集を一時的に中止していた期間があったためである。 当初の研究計画では,昨年度は高学歴発達障がい者の雇用を推進している一般企業の事業主に対するインタビューであったが,今年度予定であった高学歴発達障がい者の就労支援の現場で働いている職業支援指導員へのインタビューと順番を入れ替えて実施した。一時的にインタビューを中止していた期間はあるものの,研究計画を進めることができている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,遅れていた高学歴発達障がい者の雇用を推進している一般企業の事業主に対するインタビューを再開できている.また、今年度後半には予定通り当事者や家族に対するインタビューを実施の予定である.次年度は、これまで実施してきた一般企業の事業主,職業支援指導員,そして当事者や家族に対するインタビュー結果の分析を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、コロナ禍で学会出張がなかったこと、インタビューのデータ収集が計画通りにいかず、その結果テープ起こしの費用が抑制されたことが次年度使用額が生じた主な理由である。今年度はインタビューが進んでおり,主な使用額となるテープ起こし費用は順調に支出されると考えている.
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