研究課題/領域番号 |
20K02154
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
西村 純子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (90350280)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 女性就業 / 労働市場 / ワークライフバランス政策 |
研究実績の概要 |
1990年代から2010年代にかけての、日本のワークライフバランス政策の展開やその特徴、それらが女性の就業行動におよぼすインパクトにかんする議論を整理するとともに、女性の就業行動に関するデータ分析に着手した。 日本の社会保障システムの特徴のひとつは、職域単位の社会保険制度のもと、給付資格が労働市場でのポジションと強くリンクしていることである。このような福祉給付の基本的な枠組みは、社会保険の給付にとどまらず、企業独自の福利厚生やワークライフバランスにかかわる他の社会サービスの給付にも波及している。福祉給付の受給資格が労働時間や雇用契約のタイプをもとに決定され、正規雇用者に比べて、しばしば労働時間が短く有期雇用であるような非正規雇用者は、給付が受けにくくなっている。 1990年代以降、一方ではこのような福祉給付の基本的な枠組みを維持しつつ、他方でワークライフバランス政策の進展と労働市場の二重性の深化が同時におこった。このことが女性労働者の二極化をもたらした可能性がある。つまり正規雇用者として雇用され、経済的に自立し、福祉サービスの十全な受給資格をもつような女性労働者があらわれる一方で、低賃金・不安定な雇用で、福祉サービスの恩恵を十分に受けられないような非正規雇用者も増加した。 こうした女性労働者の階層化の傾向は、ワークライフバランス政策の進展とともに顕著になったのではないかと予想された。1990年代以降のワークライフバランス政策の進展によって、正規雇用者はより手厚い給付が受けられるようになったが、非正規雇用者にはその恩恵が十分に及んでいない。このことが女性の就業行動にも差異をもたらすようになったと予想された。このような仮説をもとにデータ分析をおこなったところ、1993-2004年に比べて2010-2017年においては正規雇用者にのみ離職が起こりにくくなっていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ワークライフバランス政策の進展の背景にある日本独自の文脈を検討しつつ仮説を導出し、データ分析に着手することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
出産・育児期の女性の就業行動についてさらにデータ分析を進めるとともに、中断・再就職後の正規雇用獲得、再就職後の賃金にかんしてもデータ分析をすすめ、成果を公表する。
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