1990年代から2010年代における女性の就業行動にかんして、コーホート別の動向に着目してデータ分析をおこなった。 1990年代から2010年代に出産・子育て期をむかえた女性の就業行動をコーホートごと(1965-69年、1970-74年、1975-79年、1980-84年出生コーホート)に検討した結果、下記のことが明らかになった。第一に、若いコーホートの女性は年長コーホートの女性より、出産・育児期に労働市場とのつながりが強まっていた。具体的には、1975-79年および1980-84年出生コーホートの女性は、1965-69年出生コーホートの女性よりも、第1子出産年に就業している確率が高く、第1子出産年に離職していた場合にも再就職する確率が高い。第二に、若いコーホートの女性ほど、出産・育児期に就業する傾向が強まっているものの、若いコーホートの女性でも半数程度が第1子出産年に無職となっていた。離職後の正規雇用就業確率については、コーホート間で差異はみられず、若いコーホートほど離職後に正規雇用に就きやすくなっているという傾向は確認されなかった。第三に、出産前の賃金と出産後3年間の賃金が観察されたケース(離職を経験しているケースについては、再就職後3年間の賃金が観察されたケース)について、就業中断と賃金との関連を検討したところ、中断そのものではなく、非正規雇用に就くことが女性の賃金を低くしていることが明らかになった。女性の就業中断がその後の非正規雇用就業と強く結びついていることをふまえると、就業中断は、女性のその後の労働市場における不利な状況をかたちづくる、ひとつの契機となっていることが示唆された。
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