研究課題/領域番号 |
20K02164
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
大槻 茂実 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (20589022)
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研究分担者 |
細木 一十稔ラルフ 上智大学, 総合人間科学部, 助教 (00820557)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Social Quality / 多文化共生 / 協働 / 社会福祉 / 組織間連携 / 庁内連携 / 基礎自治体 / QCA |
研究実績の概要 |
本研究は、自治体における「社会の質(Social Quality)」の向上に関する施策の成立・阻害要件を経験的アプローチから追究することを目的とする。具体的には、基礎自治体を対象とした量的調査および典型的な自治体の職員に対する聞き取り調査を実施し、分析知見の導出を行う。本研究は共助型社会に向けた行政施策を体系的に整理し、制度とコミュニティの関係性を制度の視点から検討することに特徴をもつ。 Covid-19に起因する社会状況の大きな変化を鑑み、本研究も当初の研究計画を変更した。具体的には、第一に自治体職員を対象とした聞き取り調査の変更である。本研究ではCovid-19を背景として自治体職員の業務が逼迫している状況を鑑み、既存研究において蓄積された知見の精緻化に重心を定めた。この研究計画の変更は、Covid-19に起因した不可避的な選択であったと判断される。しかしながら、既存研究における精緻化を行うことで、本研究の鍵概念であるSocial Qualityの指標化および基礎自治体に対する質問紙調査の準備を十分に行うことが可能となった。第二に、調査対象の変更である。本研究では調査対象を全国から関東圏の基礎自治体に絞った。この変更は、Covid-19に起因する社会状況の変化、既存研究との比較可能性、本研究の予算などの点に関する研究分担者、研究協力者との継続的な議論の結果に基づく。 上記の変更を踏まえた上で、2022年度はSocial Qualityの下位概念である社会的凝集、社会的エンパワーメントに関する基礎自治体に対する量的調査を実施した。回収率は60%程度であり、比較的高い回収率が得られたと判断できる。上記で示した本研究における質問紙調査に向けた入念な準備が、回収率に少なからず寄与した可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Covid-19に起因する社会状況の変化を踏まえて、本研究も研究計画の大幅な変更を行なった。具体的には、本研究で実施予定であった量的調査は、全国基礎自治体ではなく、関東圏の基礎自治体に変更した。それと同時に、本研究の量的調査を、本研究の鍵概念であるSocial Qualityの下位概念ごとに実施することとした。したがって、サンプルサイズの変更は生じたものの、基礎自治体を対象としてSocial Qualityを測定するといった本研究の枠組みにより即した社会調査が実現できたと考えられる。 Social Qualityの下位概念のうち、社会的凝集と社会的エンパワーメントについては実査を実施済みである。いずれの調査も60%程度の回収率であり、質の高い調査データが得られたと判断される。社会的包摂と社会経済的安定については、オープンデータによる分析をすすめつつ、2023年度の実査に向けて引き続き準備をすすめていく。 上記のように、本研究は分析枠組みに沿った入念な準備にもとづく社会調査を実施している。Covid-19の影響から一部の研究計画の変更は余儀なくされたが、研究全体の計画とスケジュールに致命的な問題が生じているわけではない。このような点を踏まえて、最終的な研究の成果については大きな遅れは生じていないと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、COVID-19の社会的状況を踏まえて慎重に進める必要がある。本研究は、一般市民ではなく、行政組織とりわけ基礎自治体を対象とした社会調査を実施することにその特徴がある。本研究の鍵概念であるSocial Qualityのうち、社会的凝集と社会的エンパワーメントについては量的調査を実施済みである。社会的包摂と社会経済的安定性についてはオープンデータによる分析をすすめつつ、COVID-19をはじめとした社会状況を踏まえた上で量的調査を実施する予定である。いずれにせよ、データ収集の見通しは良好である。 今後は得られたデータの分析をすすめ、分析知見のアウトプットを積極的に進めていく。特に2023年度はこれまですすめたQCAアプローチのトレンドを踏まえた上で、Fs/QCAによる分析を中心的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19に起因する社会状況変化を踏まえて本研究が当初計画していた社会調査の変更を行なった。具体的には、サンプルサイズの変更を行なうと同時に、鍵概念であるSocial Qualityの指標化に即した複数回の社会調査を基礎自治体に対して行うこととなった。したがって、本研究の枠組みにより適した方向への研究計画の積極的な変更と判断できる。その結果として、次年度使用額が生じることとなった。 主な予算の使用としては、2022年度までに実施予定であった社会調査の費用が挙げられる。特に研究計画当初からサンプルサイズの変更、webによる回答形式への変更が生じていることから、それに伴って、追加資料の購入、印刷費用、人件費などで細かな見積もりの変更が生じることが想定される。 それと同時に、2023年度は本研究の最終年度となることから、最終報告書を含めてこれまでの分析知見のアウトプットに向けた準備を進めていく。そのための費用にについても2022年度までの繰り越し予算を充てる予定である。
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