研究課題/領域番号 |
20K02166
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
天田 城介 中央大学, 文学部, 教授 (70328988)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 戦後日本型生存保障システム / 分配 / 社会制度 / 言説 / 社会構想 / 歴史社会学 / 国際比較分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、戦後日本社会において「生存保障システム」と呼ぶべき仕組みがいかに形成され、変容してきたのかを解読した上で、欧州・アメリカ・東アジアとの国際比較分析を実施することを通じて、戦後日本社会における「生存保障システム」をめぐる言説の編成を提示するものである。上記の目的を達成するため、2020年度は以下3点から研究を展開した。 第一に、新型コロナウィルス感染拡大により国内外のフィールドワークは断念せざるを得なかったが、2020年度は「戦後日本型生存保障システム」という視点から戦後日本社会の歴史診断を行った。とりわけ高度経済成長期の1960年代において「戦後日本型雇用システム」に対していかなる社会的評価がなされたのかについて分析した。これらの成果は複数の学術論文として発表した。 第二に、「低成長時代」「ポスト経済成長時代」と呼ばれる今日において、いかに日本社会における生存保障システムが評価・批判されているのかを考察した。特に、そこでのジェンダー不平等がいかに論じられてきたのかを分析した。これらの成果は学術論文として発表しており、2021年度は著書で発表する予定である。 第三に、上記を個人として進めると同時に、中央大学社会科学研究所のプロジェクトとして「生存保障システムの形成と変容」(代表:天田城介)を国内外の研究者20名近くで進めており、それぞれの社会において生存保障システムがいかに形成・変容しているのかについて総合的プロジェクトを展開した。これらの成果は2022年度中に英語の著書として発表する予定である。 以上のとおり、本研究は着実かつ飛躍的に発展していることは確実である。国内外で数多くの研究成果を発表しつつあるが、引き続き国際的な情報発信に努めたい。加えて、2021年度は2冊の単著、2冊の編著を刊行する予定である。また、これらの研究成果を国際学会等で発表していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度としては、研究発表にあるように、①個人の業績として着実な研究展開ができたこと、とりわけこれまでに書いてこなかった主題について生産的に論文をまとめることができたこと、②国内研究者との共同プロジェクトを通じて「生存保障システム」という総合的なプロジェクトを展開することができたと同時に、個人としては自らの研究の独自性・独創性を強く意識化しつつ、論考を進めることが可能であったこと等から、当初の予定以上に進展しているといえる。 しかしながら、新型コロナウィルスの感染拡大によって、①'海外研究者との交流がオンライン会議システムを通じた打ち合わせなどの限定的なものにならざるを得なかったこと、②'当初予定していた海外でのフィールドワークをすべて断念せざるを得なかったこと等から、研究活動の一部は制限されざるを得なかった。他方で、「戦後日本における生存保障システムの歴史社会学」という研究に力点を置いた研究を飛躍的に展開することができたという意味で、研究は「おむね順調に進展している」と評価される。
①の成果としては、複数の論文等を発表することが可能であった。2021年度には複数の単著・編著を刊行する予定であり、確実な進展・飛躍的発展を示すことができた。 ②の成果としては、中央大学社会科学研究所のプロジェクトとして「生存保障システムの形成と変容」(代表:天田城介)を展開することによって、総合的かつ体系的な分析が可能となったと同時に、自らの研究のオリジナリティを意識した研究展開が可能となった。 以上の2点を中心に研究成果を着実に生産・発表することができている。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は以下3つの点から研究を遂行する予定である。 第一に、戦後日本社会における生存保障システムの変容の形成と変容に関する歴史社会学の研究を継続的に進める。すでにこうした「戦後日本型生存保障システムの歴史的変容」に関する論文は発表済みのため、2021年度は複数の単著としてまとめ、発表する予定である。 第二に、新型コロナウィルス感染症の収束次第であるが、2021年度後期においてはアメリカ社会における生存保障システムの形成と変容に関する分析を行うため、フィールドワークを実施する。ただし、新型コロナウィルスの感染拡大状況が続いているようであれば、大量かつ膨大な英語資料をもとに文献研究を中心に進める予定である。 第三に、2021年度は、新型コロナウィルスの感染拡大により2020年度には活動が制限されざるを得なかった国際的な学術ネットワークの形成を積極的に図りつつ、国際学会での発表や国際研究プロジェクトの企画・運営・発表などを積極的に行う予定である。 以上のとおり、2021年度以降も本研究は継続的に推進し、より発展的に展開する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大により当初予定していた国内外のフィールドワークをすべて断念せざるを得なかったため、2021年度に使用額が生じた。
|