研究実績の概要 |
本年度は、研究課題の最終年度として、ヤングケアラー支援にかかわる政府・各地方自治体の取り組みや調査活動などの資料を基盤としながら、家族ケア責任規範がどのように立ち上がっているのかについて、批判的に検討した。この点にかかわる公表論文を執筆した。この研究を通じて、事後救済型の支援の限界、「家族まるごと支援」をめぐる理論的課題を整理した(『現代思想』2022年11月号)。 また、若者ケアラーへのインタビュー調査を通じて、「親に頼ることができない」子ども・若者の共通の課題を探ることで、18歳での年齢区分をめぐる問題、当事者主導型のアクションリサーチの重要性を確認した。とりわけ、家族ケア規範の脱構築の手がかりとして、ヤングケアラーにとどまらない全世代型のケアラー支援について、各地方自治体の条例を検討しながら、その可能性と課題を整理した。 10以上の自治体で、全世代型の「ケアラー支援条例」が制定される一方で、2つの自治体において、年齢区分を明確にした「ヤングケアラー支援条例」が制定されている。後者の特性は、情勢の具体化の主体として「親・保護者」が想定され、その養育責任の強化が条文にも明記されている点である。ヤングケアラー支援は、全世代のケアラー支援につながる可能性がある一方で、親責任という形態によって、再び家族ケア規範を強化する可能性も同時に発生していることを明らかにし、公表論文としてまとめた(『子ども学』2023年5月刊行予定)。 2023年2月、イギリスのヤングケアラー支援の現状を知るために、Carers Trust, Children’s Society, Sheffield Young Carersを視察し、海外の研究者・支援者とのネットワーク構築を図った。
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