研究課題/領域番号 |
20K02186
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
湯川 順子 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 助教 (80709642)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オランダ / エイジング・イン・プレイス / インフォーマル・ケア |
研究実績の概要 |
超高齢化する日本では、介護保険制度の持続可能性という課題への政策的対応として、「地域包括ケア」政策によって、「住み慣れた地域で最期まで」を実現すべく、地域での助け合い(地域ケア)や介護予防(セルフケア)などを中心にインフォーマル・ケアの活用が模索されている。高齢化への対応としてのエイジング・イン・プレイス(住み慣れた地域で最期まで)を実現するためのインフォーマル・ケアの活用は、先進諸国に共通してみられる。とりわけ、オランダは2015年の社会支援法改正によって、インフォーマル・ケアをくみ込んだエイジング・イン・プレイス政策を展開している。インフォーマル・ケアは、大きくセルフケア、家族ケア、地域ケアに分かれる。このなかには、ケアする家族へのインフォーマルな支援も含まれている。そして、オランダの特徴としては、基礎自治体の権限と責任でエイジング・イン・プレイスを進めること、セルフケア、家族ケア、地域ケアというインフォーマル・ケアを活用して地域での生活を継続できるように専門職がオーダーメイドの支援をしているところにある。しかし、オーダーメイドサービス提供の失敗、サービス量の減少によるクライエントの異議申し立てという課題があるとの指摘や、一人暮らしの高齢者の認知症が進んだ場合など、エイジング・イン・プレイスの実現には課題も多い。また、基礎自治体の権限と責任でエイジング・イン・プレイスを進めていく上で、地域差についてもみていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で、オランダでの現地調査を延期していたため。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の影響で現地での調査を延期していたため、研究期間を延長し、令和5年度に現地調査を実施することとした。2015年の社会支援法の改正から8年目を迎え、基礎自治体による政策の進捗状況にどのような差が現われているか、新型コロナウイルス感染症の拡大によりインフォーマル・ケアの活用をすすめる政策がどのような影響を受けたのかなど、人と人との接触が難しかった時期に、地域で生活する高齢者の長期ケアにどのような影響が出ていたのか、複数の基礎自治体で政策担当者にインタビューを実施する。インフォーマル・ケアへの影響そのものだけではなく、フォーマル・ケアとインフォーマル・ケアの関係性の視点からもアプローチしたい。インフォーマル・ケアについては、とくに、イギリスの実践をモデルに取り組まれている社会的処方を進める政策に注目したい。また、直接個別支援に関わっているソーシャルワーカーや、地域支援にかかわっているソーシャルワーカー、ボランティアコーディネーターなどへのインタビューを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では複数回の訪問によって現地調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症がなかなか収束せず、研究が遅れていた。そのため、現地への訪問前にオンラインでのインタビューを行い、十分に準備した状態で現地調査を実施する計画である。
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