研究課題/領域番号 |
20K02188
|
研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
矢島 卓郎 目白大学, 人間学部, 客員研究員 (60438885)
|
研究分担者 |
渡邉 流理也 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40750120)
雪吹 誠 目白大学, 人間学部, 准教授 (70438886)
荏原 順子 目白大学, 人間学部, 教授 (80342054)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 重症心身障害児者 / 身体イメージ / SD法 / 看護師 / 介護福祉士 / 濃厚な医療的ケア / 個別式体感音響装置 |
研究実績の概要 |
【経過と目的】今年度は、研究協力施設が新型コロナ感染拡大に伴い実践的取り組みは延期となった。そのため、取り組み開始前に実施した重症対象者に対する病棟職員の評価を看護師とそれ以外の職員で認識の違いについて検討することを目的とした。 【方法】実践対象者:重症者4名(男性2名、女性2名)、アンケート対象者:当該病棟職員39名、調査項目:実践対象者4名に対する身体イメージを形容詞対28項目で構成したSD法で評価、手続き:施設看護部長と調査内容の確認と検討、印刷・配布・回収者:第三者のS施設支援部職員、実施日:2020年2月24日-3月8日、分析日:2020年10月 【結果および考察】対象者39名、分析対象者36名、回収率92.3%、看護師19名、介護福祉士11名、保育士など5名で、女性27名、男性9名、病棟勤続年数は3年~5年未満14名、5年以上17名であった。長期勤務の職員が多いことは、濃厚な医療的ケアが求められる病棟であることが反映していると考えられた。 低体温で静に寝ていることが多いA氏は、静かな、薄いなどが共通であるのに対して、誠実なが看護師、はつらつなが介護士などの評価が高い。自傷など行為があり、側臥位で過ごしているM氏は、楽しい、興奮したなどが共通し、激しい、大きいなどが看護師の評価が高い。人工呼吸器を装着したT氏は、繊細な、平和的な、濃いなどが共通評価で、晴れた、大胆ななどで介護士の評価が高い。側臥位で傾眠状態に過ごすことが多いK氏は、苦しい、繊細な、弱いなどで共通の印象を持たれていますが、くもった、不愉快な、のんびりしたで看護師の評価が高い。取り組み対象者の職員がもつ印象の差違は、職種による専門的な支援の違いが反映していることが推察された。 今後、ワクチン接種など感染対策が整い、継続的な取り組みが終了後に同様な調査をおこない、職員の印象の変化からその有効性を検討したい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2013年度採択された基盤研究(B)・25285167によって、音楽などの信号を振動に変換し、その振動を最大8名に呈示することが可能となる個別式体感音響装置を開発し健常学生でその有効性を確認した。本研究は、この装置を活用して、医療型障害児入所施設で生活する重症児者の緊張の緩和と生活の質を高めること、そして、その効果が客観的指標により確認された場合、人手不足に苦慮する重症児施設における療育の一方法として周知するとともに、重症児者と同様に寝たきり状態の高齢者施設入所している認知症高齢者にも適用を目指すことを目的としている。 今年度は、①健常大学生に童謡の嗜好を確認した後、最大4名ずつに分けた大学生にストレス場面を設定し、その後に集団式体感音響装置を活用して好みの童謡で駆動した振動を腰に呈示することでリラックス効果が生起するか確認する、②全国の医療型障害児入所施設の療育活動の実態をアンケート調査する、③研究協力施設の重症者4名に集団式体感音響装置を活用して「音薬」により振動を呈示する実践的取り組みを6ヵ月継続的に実施してリラックス効果を心拍変動、顔の皮膚温の変化、および取り組み開始前後に病棟職員に対象者の身体イメージなどの評価を指標に取り組みの効果を確認することを予定していた。 しかしながら、昨年末から新型コロナの感染が拡大し、大学及び全国の重症児施設、研究協力施設が非常事態になったため、いずれの研究も実施することができなかった。ただ、大学生の童謡の嗜好調査と協力施設における4名の重症者に対する評価の調査の分析はおこなうことができた。後者については、病棟職員のうち看護師と介護福祉士などの職種の違いにより重症者のイメージ評価が異なる傾向も確認でき、そのことを今年度の研究実績で報告した。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究は、今年度に実施できなかった研究を進めたいと考えているが、研究の遂行は、新型コロナ感染の終息状況によると考えている。感染の終息に向かう過程において、ワクチン接種が重症児施設の重症児者、職員、そして研究者に実施されれば、現在も閉鎖されている病棟が開放され、集団式体感音響装置による実践的取り組みが可能になると推察している。同様に、クラスターも生じたことのある全国の重症児施設においても、職員が落ち着いて業務をおこなえる状況になれば、施設の療育に関わる実態調査への協力も得られ易くなると考えている。また、学生へのワクチン接種も秋頃までには実施されるものと期待しているが、感染やワクチン接種状況をふまえて、学生対象の小集団による体感音響装置による振動の効果の研究も実施したい。 研究の実施が可能になった時に、遅滞なく研究に取りかかれるよう、研究機器の購入やアンケート調査内容の検討をおこなうことにしている。また、現状では、研究者が対面で研究会議をおこないにくい状況にあるため、今年度と同様に主にリモートによる会議で連携や調整をおこなうことにしている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナ感染拡大のため、医療型障害児入所施設および大学における実践研究や実験的研究をおこなうことができなかった。そのため、研究に必要とした機器類などの購入は新型コロナ感染の終息の目処が立ち、実施可能が予測されたときに購入を予定している。 また、アンケート調査などの費用についても全国の重症児施設が落ち着いて協力可能になったときに実施する予定であり、その折りに使用することにしている。
|
備考 |
荏原順子(分担) 編 日本介護福祉士養成協会 「介護福祉士養成施設の教員の教育力向上に関する調査研究事業 厚生労働省令和2年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金(社会福祉推進事業分)報告書」総ページ186(127-128),2021.
|