本研究の目的は、重度の身体障害と知的障害をあわせもつ重症心身障害者の地域生活支援の構造を明らかにし、実践課題の抽出とその解決方法を示すことであった。本研究の具体的な展開は、次の①から③である。①文献研究による、重症心身障害者支援に関する研究の到達点の明示、②質的調査による重症心身障害者の地域生活支援の構造の明示、③支援実施上の課題の抽出と、その解決方法の明示。 2022年度は、親元や入所施設ではなくグループホームや賃貸住宅等で暮らす重症心身障害者とその支援者たちの支援状況を学ぶべく、参与観察やインタビュー調査を行った。他、重症心身障害者が多く利用する入所施設の見学や職員へのインタビュー調査も行った。 本研究では地域生活支援の構造の理解とともに、特に支援構造の柱となる「支援キーパーソン」の重要性を確認することができた。地域生活が親元や入所施設と異なるのは、複数の支援者が障害者本人の生活に関わり、時間によって支援の担い手が交代することである。そのため地域生活においては、支援を引き継ぎ、現地点から次に「つなぐ」支援が不可欠となる。障害者の生活をトータルに捉え「つなぐ」―生活の継続性を担保する―支援キーパーソンには、生活支援の専門性とともに、障害者本人との関係の深まりや支援の経験が求められる。また、重症心身障害者の生活には医療的な支援が不可欠になる。支援キーパーソンと医療従事者との協働の仕組みの構築が、地域生活支援において重要になる。 本研究では調査研究結果をもとに、支援構造や、支援実施上の課題と解決の方途を見出してきたが、政策提言できるまでに普遍化した課題及び解決方法の提示までは至ることができなかった。このことを今後の研究課題とし引き続き取り組んでいく。
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