研究課題
本年度、これまでの研究会での議論および調査研究の蓄積を活かして、以下の研究実績をまとめることができた。第一に、産業の空洞化、人口減少、格差拡大が起こっている課題先進地域である離島過疎地域における就労と生活の実態を明らかにし、地域住民の生活の安定のために自治体が独自に取り組んでいる季節的な手当制度、医療受診支援プログラム、公営住宅保障、季節的な労働者確保策の現状と意義を明らかにした(金子)。第二に、ワークフェア/アクティベーションによる労働市場やコミュニティへの包摂が注目される中で、市場原理と生産主義(産業主義)に異議を唱える「批判的・交差的な社会政策研究」の議論を分析し、ベーシックインカムやベーシック・アセット/ケアといった分配論を含めて、分配的正義に関わる政策理論の可能性について考察した。また正義や権利ベースによる生活保障の仕組みとして、欧米の条件つきベーシックインカム、保証所得(Guaranteed Income)、臨時的な給付金制度に関するプログラムに注目し、孤立対策、地域再生、雇用創出に先駆けて、補足的であれ所得保障政策を拡充することの意義を確認した(金子・関水)。第三に、若年貧困層が尊重されながら地域で生活でき、参加可能なコミュニティを構築・発見できるようになるため、社会起業型コミュニティワークによる地域再生が有効であることを考察した。その際に、市場経済に対置され、交換・再分配・互酬を生活者の視点からコントロールする社会的連帯経済(「人間の経済」)の意義を考察し、それらの到達点と実践モデルの有効性を確認した(柴田・竹内・直島)。第四に、働きづらさを抱えるひとたちの雇用、就労機会の創出を社会資源開発という観点で捉え、社会資源および開発の意味を再検討した上で、多様な意味での自立および就労を前提として地域再生に資する社会資源開発のあり方を考察した(橋川)。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
明治学院大学社会学・社会福祉学研究
巻: 163 ページ: 139-150
ソーシャルワーク研究
巻: 6 ページ: 33-41
コミュニティ福祉学研究
巻: 16 ページ: 15-28
協同の発見
巻: 375 ページ: 59-68
地域福祉実践研究
巻: 14 ページ: 4-46