研究課題/領域番号 |
20K02200
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
朴 光駿 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (30351307)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 東アジア比較 / 日中韓比較社会政策 / 貧困政策 / 資産形成政策 |
研究実績の概要 |
本研究は日・中・韓における「就労型貧困政策」の内容・成果・課題を明らかにするための比較研究である。2022年度はようやく韓国での現地調査が可能になったが、中国での現地調査はコロナの影響によって引き続き不可能な状況が続いた。そのため、韓国の貧困政策については現地調査を通して研究を進め、中国の貧困政策については、文献や関連法規に基づいた資料分析とともに、必要に応じて中国の研究者との遠隔意見交換を通して研究を進めた。 韓国の就労型貧困政策については、若者のための資産形成政策を中心に4回にわたる現地調査と専門家聞き取りを行い、その全容を把握し、多数の事例を収集した。調査地域は釜山市東区と済州特別自治道西帰浦市の2ヶ所を中心に行った。資産形成政策は「青年発達口座」と知られるが、具体的に見るとその中にもいくつかの事業が含まれている。2022年度の研究を通しては、青年貧困者の自立支援のための資産を形成するように支援していく様々な政策プログラクムの内容を明らかにした。 中国の就労型貧困政策の代表的例としての「扶貧政策」については、その歴史的発展過程と内容、1990年代以降の貧困率の変化、「脱貧困」宣言の条件として使われている12項目にわたる政策評価指標を明確にした。扶貧政策は中央政府の多数の部署とともに、共産党指導部が深く関わる政策であるので、既存の最低生活保障制度とはその性格を異にするが、その相違点についても明らかにした。2023年度に研究成果の公表を目指し研究結果をまとめている。具体的には、扶貧政策の概念と歴史、農村扶貧政策の発展と成果および特徴、そして扶貧政策の成果を測定するために使われる指標を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は文献分析を基本としつつ、主に現地調査と専門家面談調査を通して、日中韓の就労型貧困政策の実態を明らかにすることを研究内容とする。2020年度と2021年度にはコロナの影響によって韓国・中国への現地調査と面談調査が全面的に中止され、研究期間の延長が不可避になった。幸に2022年度からは韓国での現地調査は可能になったが、中国の場合2022年度も現地調査が不可能になった。このような事情によって、当初の2020から2022年度までの3年間研究から1年間の研究期間延長を行い、2023年度を研究終了年とした。全体的に1年間の遅れが出ている。 中国の就労型貧困政策については、主に文献研究を通して研究結果を2023年度に公表すること、研究成果の一部である「日中韓貧困政策の比較研究」の著書の中国語訳を公表することを最終的研究目標とする。 一方、韓国の就労型貧困政策については現地調査と専門家への意見調査、資料分析を活用し、2023年度に研究をまとめることを目標とする。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、韓国と中国の就労型貧困政策の内容と成果及び課題について、研究結果をまとめ、学会誌・学術雑誌を通した研究発表とともに、研究成果を社会に発信するために一般出版を進める。中国扶貧政策については、日本国内での資料・情報が乏しく、既存の貧困政策との違いが明らかになっていない事情があるので、扶貧政策の特徴を主に論議する「中国扶貧政策の性格論」(仮題)を学術論文として発表することに優先順位を置く。研究成果の中国語訳もすすめているが、その作業は主に中国チベット民族大学法学院の教員の馮怡氏との協議のもと、進められている。 2023年度も中国での現地調査は難しいと見込まれる。その限界を克服するために、可能であれば、中国社会科学院の関連研究者を日本あるいは韓国に短期間招待し、研究結果の集中的検討とともに、研究結果に対する諮問を受けることで、研究の完成度を高めていきたい。中国社会科学院の研究員とは現在協議が行われている。 韓国の就労型貧困政策については、主に資産形成政策である青年発達口座事業を中心に、2回の現地調査を行い、韓国の研究協力者と協議しながら4年間の研究結果をまとめて研究成果を韓国の学術雑誌などで発表する計画である。韓国貧困政策についての研究成果は、韓国社会保障情報院および韓国社会政策研究院の研究者などの諮問を受けながら研究をまとめていく。 また、この研究成果の一部である「共生とケア」というテーマについては、共著の形で一般出版が進められており、2023年内には公刊されるようになっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年から2年間コロナの影響で中国と韓国での現地調査ができなくなり、出張経費の執行が出来ず、研究期間を2023年まで1年間延長したため、次年度使用額が発生した。
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