本研究は日・中・韓における「就労型貧困政策」の内容・成果・課題を明らかにするための比較研究である。韓国の就労型貧困政策については、3回にわたる現地調査を行い、その全容を把握した。さらに、貧困高齢者の介護問題についても多くの資料を収集した。また、全体的な社会政策の流れの中で韓国の貧困政策の方向性をどのように判断するのかについて2人の専門家から聞き取り調査を行った。さらに韓国の専門研究者を日本に招待し、講演会を開くことで、関連資料を収集した。ただ、2023年度においても中国での現地調査は当局の許可を得ることが難しく不可能な状況が続いた。そのため、中国の貧困政策については最新の政府方針や条例などを収集しながら、必要に応じて中国の研究者との遠隔意見交換を通して研究を進めた。 2023年度には、韓国と中国の就労型貧困政策の内容と成果及び課題について、研究結果をまとめ、学会誌・学術雑誌を通した研究発表とともに、研究成果を社会に発信するために一般出版を進めるという計画を立てていた。中国扶貧政策については、日本国内での資料・情報が乏しく、既存の貧困政策との違いが明らかになっていない事情があるので、研究内容をまとめている。現在、学会などを通してその報告を行う準備をしている。研究成果の中国語訳もすすめているが、その作業は主に中国チベット民族大学法学院の教員の馮怡氏との協議のもと進められている。 この研究成果のうち、「共生とケア」に関わるテーマについては、2023年10月共著の形で明石書店から出版された。こうした研究成果については、本研究の研究協力機関である中国社会科学院や延辺大学、韓国社会保障情報院および韓国社会政策研究院の研究者などとの共有が進められている。
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