研究課題/領域番号 |
20K02216
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
石川 智 杏林大学, 保健学部, 講師 (70580562)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心的境界 / 文献調査 |
研究実績の概要 |
本研究では、①心的境界の概念構造を量的に検討するために、Hartmann(1991)の境界尺度日本版(児玉,2013)をもとに児童養護施設入所児童への適用可能性を検討し、修正版を作成する。②作成した尺度により施設入所児童の心的境界の構造を明らかにする。③尺度を用いて心的境界を扱った性教育プログラムの有効性を検証することにより、よりよい支援につなげることを目的としている。今年度は心的境界の概念構造について明らかにするために文献調査を行った。境界概念の用い方について、主に相手のパーソナリティを理解し記述する言葉として「境界」という言葉を使用している研究と、心理教育上のキーワードとして「境界(境界線)」を用いている研究の2種類に分類された。前者の場合は境界をある程度実体的にとらえ、境界の厚みやもろさなどの表現を用いて境界自体の特徴を示していた。後者の場合は境界(線)についていくつかカテゴリー分けがなされているものの、「身体的境界線」「感情的境界線」など心理的概念として理解できるもののほかに「責任の境界線」「尊厳の境界線」など、心的機能とは呼びにくいものもカテゴリーに含まれ、心理教育のための用語としての側面が窺われた。境界概念のパーソナリティー的側面と心理教育的側面の関連性についてはさらなる検討が必要である。今後は児童養護施設入所児童を対象とした尺度の開発を目指し、アタッチメントなどの関連概念との関連性や、妥当性の高い項目の収集を進め試作版を作成する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度のコロナ禍により、研究課題の進捗は多方面にわたって影響を受けた。第一に学務が増加し研究作業に割くことができる時間が減少した。第二に、研究にかかわる各機関との連絡が滞り、調査への協力依頼が遅れたもしくは困難となった。第三に、文献の入手についても滞り、研究自体も作業が進みにくいところがあった。
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今後の研究の推進方策 |
現在もコロナ禍が継続しており、質問紙による調査や性教育プログラムなどについての実施可能性について再検討する必要が生じてきている。質問紙調査についてはオンラインによる調査の可能性などについて検討を進めていく。性教育プログラムについては、いわゆる感染リスクを高めない実施の工夫等を盛り込む必要があると考えている。当初予定していなかった課題が生じており、課題解決のための準備のための時間をとる必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍の為、本研究のための活動は大幅に制約を受けたことで、文献調査を中心に行った。したがって、助成金の使用は文献調査に必要なPC等の購入にとどまった。2021年度以降は試行版を開発し、調査を実施することに伴う人件費や学会発表等の旅費として助成金を使用していく計画である。
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