研究課題/領域番号 |
20K02219
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山田 雅穂 中央大学, 経済研究所, 客員研究員 (30548160)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 障害者雇用 / ダイバーシティ&インクルージョン(D&I) / CSR(企業の社会的責任) / 経営倫理 / 人材育成 |
研究実績の概要 |
令和2年度の研究実績は、研究計画調書の令和2年度の研究計画をおおむね全て達成できた。すなわち、①障害者雇用の経営と支援に通じる専門的人材として求められる要素・スキルと、②専門的人材育成のための企業の政策・システムの在り方等について、国内外の文献研究および事例研究を行うことと、令和3年度に実施予定の調査で、的確な実態把握が可能となる調査票作成のための予備調査(企業へのインタビュー調査)である。 まず文献・事例研究については、①と②の双方とも、国内・海外の先行研究共に障害者を具体的なダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の対象として含めている研究は、現段階ではほぼ存在していないことがわかった。障害者の職業リハビリテーションは欧米で制度が確立しており、その文脈での海外の先行研究は多数蓄積されている。しかし、企業および経営の視点からの研究はこれからであり、この点からも本研究の意義が大きいことが明らかとなった。 以上の文献研究を踏まえ、予備調査のインタビュー調査をzoomによりオンラインで実施した。ご協力いただいたのは、次の4名の方々である。①障害者をD&Iのメンバーとし、D&Iをグループ全体の重要な経営戦略と捉えシステマティックに展開してきたデロイト トーマツグループの特例子会社のトーマツチャレンジド株式会社:林 敬子氏(前同社社長、現・林敬子公認会計士事務所 公認会計士)、青野路子氏(同社管理部長))、②障害者雇用研究の第一人者である研究者2名:松井亮輔先生(法政大学名誉教授)、佐藤 宏先生(元職業能力開発総合大学校福祉工学科教授)) その結果、本研究の目的および重要だと想定する専門的人材、すなわち障害者雇用の経営と支援の両方に通じ、かつ企業のD&I全体に障害者を統合できる人材は企業と障害者の双方の視点から必要不可欠であり、企業内外で制度的な取組が必要だという方向性が明確となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1に、先述したように研究計画調書の令和2年度の研究計画をおおむね全て達成できたからである。第2に、本研究の目的およびテーマに関する先行研究は国内外共にほとんどなく、一方で障害者を含めたD&Iの先進企業の方々と、企業と障害者の双方の視点を含めた包括的かつ先駆的な研究を進めてきた研究者へのインタビュー調査から、本研究は企業と障害者の両方にとって、さらには障害者を含めたD&I全体において必要不可欠であることが明らかとなったからである。 特に第2の点に関して、国内の職業リハビリテーション(以下職リハ)に関する制度や機関はある程度確立されており、障害者の就労支援の専門的人材としては障害者職業カウンセラー、ジョブコーチ等が存在するが、国内の先行研究でもその人材の専門性に関する研究が少ないことは指摘されている。またアメリカでは職リハ専門人材の養成が制度化されているが、日本ではいまだ制度化されていない。さらに先述のように、企業において障害者雇用の経営と支援の両者に通じる人材が求められていることが、筆者の前回の科研費による調査で明らかになっている。この点に関して、今回のインタビュー調査で明らかになったことは、障害者を含めたD&Iを実践している先進企業の視点からも、また障害者と企業の双方の観点から研究を行ってきた研究者の視点からも、①ビジネスの視点からも障害者と企業の両者を支えられる人材と、②それをシステマティックに継続し実現できる制度の構築が必要だということである。 よって、本研究の目的及び研究計画をそのまま進めることは妥当であると実証されたと考える。また令和3年度に実施予定の調査の方向性も、明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通り、令和3年度は調査票調査を実施する予定である。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、郵送による調査ではなくオンラインでの調査を予定している。また調査対象も、当初の予定から大企業全体を外し、特例子会社とその親会社、CSRに先進的に取り組む企業を対象に絞る予定である。その後、調査票調査を補うために、調査に協力いただいた企業にインタビュー調査を行う予定である。 また調査実施の前に、上述した令和2年度の文献研究の成果を論文投稿する予定であり、現在執筆中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予備調査である企業へのインタビュー調査について、当初は直接各企業を訪問する予定だったが、新型コロナウイルスの影響により直接訪問することができなくなった。よってzoomによるオンラインで実施し、経費がかからなかったため。また同じ理由により、学会発表等についてもzoomなどによるオンライン開催となり、出席のための経費がかからなかったため。
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