研究課題/領域番号 |
20K02221
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
木下 武徳 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (20382468)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | アメリカ / ウィスコンシン / ロサンゼルス / 公的扶助 / ストリート組織 |
研究実績の概要 |
令和4年度になって新型コロナウィルスの行動制限の緩和のおかげでアメリカでの調査研究を2回行うことができた。ただし、この時期の急激な物価高騰のために渡航費用があまりに高額になり余裕のない調査研究となってしまった。1回目は令和4年7月にウィスコンシン州ミルウォーキーで、Community Advocate、University of Wisconsin-MilwaukeeのHelen Bader Institute for Nonprofit Management、UMOS、State of WisconsinのDepartment of Children and Familiesの担当者に貧困問題や福祉改革の動向、民間団体への委託契約上の問題点等について調査することができた。その後、カナダのモントリオールのConcordia UniversityにてNPO学会であるISTRに参加し、NPO研究で著名なLester Salamon教授の研究回顧の分科会に参加することができた。 2回目は令和5年1月にカリフォルニア州ロサンゼルス(LA)で、Catholic Charities of LA、Safe Place for Youth、LA County Department of Public Social Services、AADAP、Little Tokyo Service Centerの担当者に、貧困問題や福祉改革の動向、民間団体への委託契約上の問題点等について調査することができた。なお、ウィスコンシン州とLAにおける福祉事務所の民間委託の契約書を入手することができた。 この調査で現状分析のためには、コロナ禍の影響を明らかにする必要があり、アメリカのコロナ禍における公的扶助の対策やその影響について論文を執筆した。引き継き、上記の現地調査に基づいた論文を作成する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年から始めた研究であったが、当初コロナ禍においてうまく調査研究が行えなかった。しかし、令和4年になってやっとアメリカの現地調査を行うことができた。現地調査を行うことで、アメリカの公的扶助の運用実態や利用実態等を詳細に理解することができた。また、ミルウォーキーとロサンゼルスにおいて公的扶助の運営を民間委託する際の行政と民間団体の契約書を入手することができ、これを分析することでストリート組織としての解明を行うことができると考えている。日本での調査研究はまだしっかり行えていないが、生活困窮者自立支援制度の先駆的な取り組みをしている大阪府豊中市や滋賀県野洲市等の取り組みについてインタビュー調査をすることができた。 そのなかで当初予定をしていたアメリカの福祉改革、特に貧困家庭一時扶助(TANF)の25年の実績が明確になってきており、その影響について整理をしてきた。そこではっきりしたことはTANFがあまりにワークフェアとして使いにくい制度になってしまったために利用者数が激減し、アメリカの公的扶助として効果も期待ももたれなくなっていることである。代わって、勤労所得税額控除や児童税額控除のような給付付き税額控除の方が支給額や貧困削減のインパクトとしても大きくなってきている。こうした既存の公的扶助の効力の変化があることがわかりそれを踏まえてやはりTANF以外の制度を含めた分析を行う必要があると考えているところである。 一方、国内の生活困窮者支援の調査が進められておらず、以上のことから『(4)遅れている。』とした。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度、令和5年度は本研究の最終年にあたるため、コロナ禍で遅れた調査研究の分を取り戻さなければならないと考えている。特にこの5月からは新型コロナは5類に分類されより制限の緩和が行われたため、積極的に調査研究に励みたい。そのなかで、以下のような手順で研究に取り組みたい。 第一に、令和4年度に入手した資料や現地調査に基づき、アメリカの公的扶助改革のこの25年の動向について整理、分析をして論文にする。第二に、入手した委託契約書等を基にロサンゼルスとウィスコンシンにおける民間委託の実態とストリート組織としての位置づけについて分析を行う。まずはウィスコンシン州の民間委託が大きく拡大していることからそれを基に論文を作成したい。第三に、日本における調査研究としては、生活困窮者自立支援制度の積極的な取り組みを行っている自治体の訪問調査を進め、制度の運用状況や民間委託の状況やストリート組織としての分析を行いたい。こうして遅れた研究を挽回して成果をあげたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
12万円程度ではあるが次年度使用額が生じた。これは、研究開始当初、コロナ禍のため、アメリカおよび国内での現地調査ができなかったことが大きな原因である。しかし、令和4年度は2回のアメリカの現地調査を行うことができ、研究費の利用としてはやっと当初計画に近くなってきたと考えている。次年度令和5年度は研究の最終年にあたるので、支出計画をしっかり立てて調査研究にとりくみたい。特に使用計画としては、次年度にはアメリカのNPO学会にあたるARNOVAに参加したいと考えており、この間の旅費の高騰などを踏まえると十分に支出される金額だと考えている。
|