研究課題/領域番号 |
20K02223
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
田中 聡一郎 駒澤大学, 経済学部, 准教授 (40512570)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 福祉国家 / 中間層 / 所得格差 / 再分配 / 社会意識 |
研究実績の概要 |
本研究では、2010年代以降の国内外のミクロデータを用いながら、中間層と福祉国家に関する実証分析を行う。福祉国家への支持基盤の獲得や分厚い中間層の再形成のための政策立案に資するエビデンスを提供するような研究を実施することを研究目的としている。 2023年度の研究成果としては、日本の所得分配の動向に関する分析、また再分配政策の支持について検討を行った。前者の日本の所得格差については、総務省統計局『家計調査』の実質可処分所得(勤労者世帯)の公表データから検討した。2022年は低所得層での経常収入の大幅な上昇が観察されたが、中・高所得層では物価上昇によって実質の経常収入は減少していた。低所得層では雇用回復があったが、物価上昇に追いつけない中・高所得層という新たな傾向が生じていることが考えられる。なお、その研究成果は『コロナ禍の行財政』(地方自治総合研究所)において公刊した。 また再分配政策への支持については、先行研究から再分配政策への支持形成プロセスについて考察を行い、日本の特徴としては、所得格差への懸念や所得格差の縮小が政府の役割と考える人の割合はOECD平均を下回っていること、また「住宅の提供」を政府の役割とする考え方をもつ人々は3割程度と多くはないこと等をまとめた。また住宅手当の導入は、若年層や低年金者の生活保障、空き家問題への対応の観点から必要性が議論されるが、国民からの支持も不可欠であること等を整理した。それらの議論については、研究会(全労済協会)にて報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、日本の所得分配の動向と再分配政策への支持に関する検討を行った。所得分配の動向については、特にコロナ禍からの家計の回復過程を分析した、論文「レジリエンスと家計所得」を『コロナ禍の行財政』(地方自治総合研究所)において公表した。再分配政策への支持については、OECDの報告書等の先行研究を参考に、日本の再分配政策への選好に関して検討を行い、全労済協会の研究会にて報告「日本の所得分配と政策」を行った。 しかしながら、上記の研究課題に取り組むなかで、中間層への再分配政策の効果について積み残した検討課題が生じてしまった。そのため翌年度まで期間延長をさせて頂き、研究成果の公表につなげたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、日本の中間層の長期的動向と再分配政策への支持について分析を行う。長期的推移についてはミクロデータのみならず、既存の公表統計から歴史的考察を行う。また、再分配支持については、継続してOECDおよびInternational Social Survey Programme等の統計から検討を行う。なお、分析を終えた論文は、学術誌への投稿などを随時行い成果の公表に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2024年度まで期間延長して取り組むこととしたため、残額が生じた。残額は論文執筆にかかる書籍・論文購入および論文投稿・英文校正の費用に充てたい。
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