研究課題/領域番号 |
20K02233
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
後藤 基行 立命館大学, 先端総合学術研究科, 講師 (70722396)
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研究分担者 |
黒木 俊秀 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (60215093)
本村 啓介 独立行政法人国立病院機構さいがた医療センター(臨床研究部), 臨床研究部, 精神科診療部長 (60432944)
久保田 明子 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (40767589)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非自発的入院 / 精神衛生法 / 同意入院 / 医療アーカイブズ |
研究実績の概要 |
近年日本では、精神科における非自発的入院の一形態である医療保護入院が2005年の約12万件から2015年の約18万件と相当な増加傾向であり、患者の自己決定や自由意志の尊重という観点からみて看過できない状況が生じている。本研究では、戦後日本の精神科入院における「家族同意にもとづく強制入院」を歴史的に考察するため、現行医療保護入院の制度的前史である精神衛生法下(1950-87)の同意入院についての研究を行う。 本研究では、第一に、精神病床・入院急増期である1960年代から80年代頃の同意入院についての実像を明らかにするために、当該時期の医療機関および行政機関作成の一次資料等を利用して、その運用事例を分析する。また、第二に、この同意入院は、これまでの応募者の研究により医療扶助の適用が多かったことが判明しているため、患者家族の経済的な困窮とどの程度関わりが深かったのかについて検証する。本研究を通じて、同意入院の実像を明らかにし、合わせて戦後日本の精神医療供給全体にもたらした歴史的意味について考察することで、先行研究の蓄積の少ない同意入院の基礎的研究となることを目指す。 なお、これに付随して、第三として、利用予定である一部医療機関作成資料は、その貴重さに鑑み研究と並行してアーカイブズ整備を行い、資料の長期保存措置を行うことも目的とする。日本の精神科入院がもつ一つの大きな特徴は、患者の同意に基づかない非自発的入院の多さ(2015年では約17万件)であり、おおよそそれは欧州諸国平均の15倍ほどで、現在入院患者の約半数を占めている。現行法においては、非自発的入院の大部分が精神保健福祉法第33条に規定される医療保護入院として行われており、そのほとんどは家族の同意によって「強制入院」が行われているのが実情である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの影響により、出張を行うことによって可能となる一次資料調査が十全に行えなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
この2年度間においてきわめて不十分にしか行えなかった一次資料調査を積極的に行い、データ解析、論文執筆のスピードアップを図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響により、予定していた資料調査のための出張が十全に行えなかったため。 次年度においては、当初の計画よりも多い資料調査出張を行う計画である。
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