研究課題/領域番号 |
20K02233
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
後藤 基行 立命館大学, 先端総合学術研究科, 講師 (70722396)
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研究分担者 |
黒木 俊秀 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (60215093)
本村 啓介 独立行政法人国立病院機構さいがた医療センター(臨床研究部), 臨床研究部, 精神科診療部長 (60432944)
久保田 明子 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (40767589)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精神衛生法 / 同意入院 / 自由入院 / 肥前療養所 |
研究実績の概要 |
本研究企画においては、当初精神衛生法下における同意入院に関する一次資料を利用した実証的研究を行う予定であったが、コロナ渦により各方面への資料調査が困難となり、データ収集に制約が生じた。しかしながら、むしろ資料調査対象機関が限定されたが故に、最終年度において当初からの候補であった肥前精神医療センターへの集中的調査を行うことになり、これに伴う成果が得られることとなった。 特に現肥前精神医療センターはその前身たる肥前療養所時代の1950年代において、戦後日本の中ではごく先駆的な「開放医療」(開放管理)を当時の伊藤正雄所長の下が実践しており、この時代前後の資料調査と分析を重点的に行うこととなった。 その結果、肥前療養所では1950年代後半期という全国レベルでは同意入院が圧倒的な入院形態の中軸であった時代において、この適用を可能な限り差し控えており、その代わりに自由入院中心の入院を実施していたことが分かった。そのほかにも、この開放管理期においては、入院患者の退所率がその前後の時期よりも有意に高くなっていることや、患者の在院期間の中央値が79日とやはり前後の時代より100日以上短縮されていたことが当時の一次資料より裏付けられた。 以上のように、現在の肥前精神医療センターには各種の貴重な運営資料、すなわち医療診療録その他の医療アーカイブズが多数保管されており、これらのうちで精神衛生法時代の資料を分析することで、同意入院や自由入院の同所における運用を含め、これまで二次研究がほとんど行われたことがなかった先駆的な肥前療養所の開放医療の一端が一次資料から明らかになった。なお、これらの成果の一部は、2023年度の『保健医療社会学論集』の特集号においてが論文化される予定である。
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