我が国において,児童虐待等の困難状況から子どもを緊急・一時的に保護するための制度として,一時保護制度がある。しかしながら,一時保護のシステムには,子どもの権利保障等の側面において課題が大きく,様々な問題が生じやすい環境にあることが指摘されている。本研究では,児童相談所外の施設への委託一時保護において,子どもの権利保障と一時保護に求められる機能を両立するために必要なアセスメント・ケア実践を明らかにすることを目的としている。研究期間を通して,協力施設でのフィールドワークおよび職員を対象とした調査を実施した。継続したフィールドワークからは,委託一時保護から施設入所となった児童の観察や心理アセスメントの結果の活用のあり方と課題について検討を行った。児童養護施設職員を対象とした調査からは,アタッチメントの観点からの理解についての特徴の検討を行った。結果より,アタッチメントの混乱にともなう否定的影響に着目されている一方,発達的な変化についての着目が少なく,年齢に応じたアタッチメントの意義について研修活動に加えて郁必要性が示された。また,児童相談所と児童養護施設の連携に関する調査からは,施設職員の実際の子どもとの関与や子ども同士の関係性について着目しながらアセスメントすることの重要性が示され,児童相談所と児童養護施設の心理職が協働した活動の意義が示唆された。これまでの研究成果については,児童養護施設および児童相談所における研修活動に利用し,研修効果に関する調査結果は2024年度に開催される33rd International Congress of Psychologyにおいて発表予定である。
|