研究課題/領域番号 |
20K02238
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
野田 博也 愛知県立大学, 教育福祉学部, 准教授 (00580721)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生活保護 / 金融 / 借入 / 保健 / 貯蓄 / アメリカ / ファイナンシャル・ソーシャルワーク |
研究実績の概要 |
生活保護における金融的手法の条件に係る変遷については、生活保護関係法令通知(特に百問百答、各年の生活保護手帳・問答集)をもとに把握した。主な金融的手法としては、貸付(借入)、保険、貯蓄に注目した。これらの金融的手法をどのように組み込み、「被保護者」の生活保障と自助促進を進めていったのかが焦点となる。まず、史的展開を俯瞰すれば、各手法について活用(保有)する水準・範囲は広がっていったことを指摘できる。その理由は、一方では、社会全体における普及度や保有に対する容認意識(逆に言えば、保有を認めないことの限界)があったことが読み取れた。他方では、保護それ自体の中身を見直すのではなく、保護の仕組みでは応じきることができない経費について「被保護者」の「自助」によって確保させるための手段として導入されていったとも解釈できる。とりわけ、貸付(借入)は、比較的早くその保有・活用が認められていったが、それは保護における一時扶助等の対応をすることをしなかった代替措置としても解釈し得る。なお、条件の変容は、行政内部による判断もあれば、裁判の判決結果といった外圧があった。後者の場合であっても、常に自助原則に抵触しないような制約や方法が盛り込まれていることも確認できた。いずれにしても、このような変容は金融的手法として包括的・有機的に進められていったのではなく、別々に少しずつ断片的に見直されいったため、保護の運用ないし利用の仕組みとしては一層複雑になっている。 金融的手法の活用を積極的に意識して個人・家庭の中長期的なウェルビーイングの向上を進めるファイナンシャル・ソーシャルワークについては、アメリカの展開に注目した。その専門家養成は、全米に広がってはいないものの、一部の先駆的な取り組みや専門雑誌の特注、包括的なテキストの発行等によって推進されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍における大学運営業務の増加や、学外出張(海外出張含む)が困難になり、当初の計画通りに進めることが難しくなった。
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今後の研究の推進方策 |
状況に応じて、社会調査の延期や規模の縮小、文献研究への変更等を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において、海外出張等が行えなかったため。 使用計画は、前年度取り止めた海外出張を実施することが最初の選択肢になる。それが難しい場合には、代わりとなる方策を検討し、その代替策に要する支出に充てる。
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