研究課題/領域番号 |
20K02249
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
湯澤 直美 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (00277659)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 女性支援 / 婦人保護事業 / 売春防止法 / 婦人相談員 / 婦人相談所 / 婦人保護施設 / 女性支援新法 / フェミニズム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、売春防止法に規定される婦人保護事業が、女性支援政策としていかに機能しているかを理論的・実証的研究を通して検証し、社会福祉事業としての今後の在り方を検討することにある。婦人保護事業は、2024年4月より施行された「困難を抱える女性への支援に関する法律」に規定される事業として新たな転換点を迎えている。女性支援新法では、都道府県基本計画を策定する義務が各都道府県に課せられたことから、2023年度は自治体において委員会が組織され、それぞれの特色のある計画が策定されている。このような状況を受けて、2023年度は以下のことに取り組んできた。 第一に、47都道府県で策定された計画の収集、パブリックコメント結果の収集を実施し、そのうえで、各自治体の現状を①事業実施状況、②事業実施体制、③評価指標の設定内容、④今後の推進体制、という視角から分析した。都道府県ごとに資源配置状況が異なることから、さまざまな差異が確認されている。加えて、計画策定のための実態把握調査をいかに実施しているかも把握した。一般市民を対象とした調査を実施している自治体もあり、今後求められる調査の在り方について考察を深めた。 第二に、婦人相談員を対象としたヒアリングを前年度に引き続き実施し、相談員が置かれている状況を、相談の特性からくるリスク管理の必要性、心理的負荷やストレスを解消しうる庁内連携の在り方などの諸点から考察した。 第三に、「自治体―婦人相談員―民間団体」の連携の在り方について検討を要することから、モデル的な実践を行っている自治体へのヒアリング及び民間団体への訪問による活動内容の把握などを実施した。基礎自治体である市区がいかにイニシアティブをとっていけるのか、女性支援事業と生活困窮者支援事業、生活保護事業など事業間の協働や連携体制も視野に入れる必要性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は複数の都道府県の計画策定に携わり、その過程において当事者へのヒアリング、市区へのアンケート調査、婦人保護施設(女性自立支援施設)・婦人相談員(女性相談支援員)・婦人相談所(女性相談支援センター)へのアンケート調査などの実施にも関与してきた。加えて、全国を対象とした婦人保護事業(女性支援事業)のアンケート調査にも関与し報告書のとりまとめも実施してきた。そのため、本研究にて実施予定であり、準備を進めているタイムスタディ調査などの量的調査を、実施に移すことが困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに準備を進めてきた量的調査の調査設計をもとに、2024年度はその実施に注力する予定である。とりわけ、女性相談支援員については、処遇改善のための研修の受講などが政府の施策として取り組まれるため、どのような条件下であれば改善が実現されていくのかを基礎自治体のレベルから考察していくことが求められているところである。そのためにも、タイムスタディ調査の成果を自治体にも還元していくことにより、女性相談支援センター配置の相談員と区市配置の相談員との業務内容の精査や新たな業務分担と連携の在り方などについても提言できるように努めていきたい。 更に、2024年度は最終年度にあたるため、歴史研究も含めた研究の最終的な考察とまとめを実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度には、自治体における計画策定と調査実施等に参画したため、本研究において準備を進めてきた量的調査を実施することはできなかった。そこで、2024年度において、「アンケート実施」「タイムスタディ調査の実施」および集計・分析および報告書作成に充てる費用が必要であり,経費はそれらに充当する。
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