研究課題
本研究は、市配置の婦人相談員による支援実態を明らかにし、市町村におけるDV被害者や困難な状況にある女性への支援のあり方を提示することを目的としている。2022年度では、コロナ禍において依頼・実施が難しかった婦人相談員への個別インタビューが実施できた。またDV支援・女性相談支援に寄与する海外知見の調査に着手した。2022年度の主な取り組みを以下に示す。①婦人相談員へのフォーカスグループインタビュー調査結果の学会発表・論文化の実施、②個別インタビュー調査の実施、③DVと児童虐待が交差しているケースにおいてDV被害者である親に対する関わり・支援に寄与する海外知見の調査ならびに紹介の実施、④婦人相談員がDV被害者等と面接する際に用いることができる「面接ツール」の作成協力の実施、⑤前年度から試行実施していた市配置婦人相談員対象の実践研究会を「DV被害者支援と女性相談ブラッシュアップ研究会」として継続し、定期的開催により実践研究の場とするとともに、研究会で本研究の知見について実践者への還元の実施。フォーカスグループインタビュー調査から、市配置の婦人相談員は「一発勝負」ともいえる相談者との初回面接時に、インテーク・アセスメント・インターベーションというソーシャルワークプロセスを実施していることが明らかになった。また婦人相談員は情報提供にとどまらず、相談者に選択肢・方法を示し、相談者自身が決めることを誘う働きかけ、さらに相談者と繋がり続けるための働きかけを行っていたことが明らかになった。このような関わりは婦人相談員による相談支援の専門性の高さを示すものである。2024年4月に施行される“女性支援新法”で婦人相談員は「女性相談支援員」に改称される。本研究により、市町村の「女性相談支援員」に求められる専門性の一端を提示できたことの意義は大きい。
3: やや遅れている
コロナ禍の状況において個別インタビューの依頼ならびに実施が難しく、2022年度の後半に実施ができるようになった。現在、個別インタビューの分析を行っているところである。
2023年度は、2022年度に実施した市配置の婦人相談員に対する個別インタビュー調査の分析を行う。現時点において調査結果から、配置される市により婦人相談員の立場・権限等に違いがあることが明らかになった。今後は、配置される市による差異と共通性の実態を示し、新法における「女性相談支援員」のあり方の提言につなげたい。
コロナ禍において調査研究が当初計画より遅れて実施されたため次年度使用額が生じた。今年度は、インタビュー調査に関わる経費、研究発表にかかる経費等、予定通りの研究遂行のために用いていく予定。
増井香名子『面接ツール「あなたへのメッセージ 大切なあなたのために 絵と図でみる・知るDV」』および面接ツールの支援者向け活用マニュアル(ガイド)に関する作成協力Eコース Safe & Together:イントロダクション【モデル入門】日本語訳担当・作成協力https://academy.safeandtogetherinstitute.com/course/intro-japanese
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福祉研究
巻: 116 ページ: 88-92
司法福祉学研究
巻: 22 ページ: 71-88
巻: 22 ページ: 33-50