研究課題/領域番号 |
20K02263
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
長沼 葉月 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (90423821)
|
研究分担者 |
森田 展彰 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10251068)
上原 美子 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (10708473)
吉岡 幸子 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (40341838)
田野中 恭子 佛教大学, 保健医療技術学部, 准教授 (50460689)
土田 幸子 鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 准教授 (90362342)
牛塲 裕治 福井県立大学, 看護福祉学部, 助教 (30905477)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ヤングケアラー / 市町村の児童福祉体制 / 精神疾患のある親と暮らす子ども / 学齢期 |
研究実績の概要 |
2021年度は、宿泊を伴う子どもの一時預かりの場について詳細な分析を行った。というのも、いくつかの研究から児童思春期の子ども達が家から離れたいと思う時間があるため、学校以外にも安心して過ごせる場所をどのように保障するか、という課題が見出されたためである。学齢期の子どもは日中は学校等過ごしやすい場所があるが、夜間の過ごし場所はない。宿泊を伴う一時預かりが可能な福祉サービスには、子どもショートステイ事業とファミリーサポートセンター事業がある。しかしファミリーサポートセンター事業の大半では宿泊を伴う一時預かりは実施していない。また子どもショートステイも人口規模が小さな自治体では実施率が低かった。また子どもショートステイでは一時預かりの場所として乳児院や児童養護施設を活用していることが多く、施設の種別によって預かれる子どもの年齢が制限されていた。特に上限年齢として小学生までという設定を設けていることが多かった。これらの制度は主としてひとり親世帯の子どもを対象とする制度設計がなされており、思春期以降の子どもが安心して家で過ごせない状況があることは想定されていないと示唆された。区市町村のごとのサービスの提供内容にも大きな差があり、精神疾患のある親と暮らす子どもにとって使いやすいサービス、制度にはなっていないことが確認できた。 また事例検討法では、いくつかの自治体との意見交換から、親や子どもの多様な状況についての理解を深めることが必要であり、介入のためには人権を基盤としたアプローチに基づきながら、親と子それぞれの強みについても検討すること、またそれぞれの生活歴や生活時間を考慮すること、さらに本人の主観的体験について想像することの重要性が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は精神疾患のある親と暮らす子どもへの支援に焦点を絞って研究を行っているが、同時期にヤングケアラーに関する国の取り組みが大きく動いており、いろいろな自治体による調査が実際されていたり、体制整備に関するモデル事業等も進んでいる。精神疾患のある親と暮らす子どももヤングケアラーに位置づけられていることから、これらの調査研究やモデル事業についても視野に入れた上で、それを補う形で研究を実施したいと考えたため、情勢の分析に時間がかかり、研究に遅延が生じ、追加調査の実施が進められなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
ヤングケアラ―への支援に関するモデル事業では、アセスメントの重要な視点や、使えるサービスについての列挙等がされており、これらをベースにして自治体から住民向けの広報などの情報が充実していくと考えられる。とはいえ、これらのサービスには自治体ごとの運用状況の格差に関する考慮はない。そこで本研究では、特に関係者が多機関で協働しながら支援に携われるような手法の提供及び事例検討方法の開発に焦点化して進めていく。よって自治体を対象に学齢期の子どもへの支援の実際に関する調査を行うと共に、関心のある支援者と共に事例検討法に関するワークショップを行い、その効果を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究実績報告書に記載した通り、ヤングケアラーに関する国の取り組みが急激に進んだため、精神疾患のある親と暮らす子どもを巡る情勢の分析や自治体の対応に関する情報収集に追われ、当初予定していた調査や活動が実施できなかったため。2022年度以降に改めて調査及び、支援者向けの事例検討法に関するワークショップを実施予定であるため、次年度使用額はそこで使用する予定である。
|