研究課題/領域番号 |
20K02270
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研究機関 | 東北福祉大学 |
研究代表者 |
矢吹 知之 東北福祉大学, 総合福祉学部, 准教授 (80316330)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 家族介護者支援 / 認知症 / 統合ケアプログラム / 一体的支援 / ミーティングセンター / 地域ケア / 認知症ケア |
研究実績の概要 |
在宅生活を継続する認知症の人と家族介護者は、これまで異なる場で支援が行われてきた経過がある。認知症の人については診断後の医師や相談員による医療的支援に加え、認知症当事者同士のピアサポートが行われている。家族介護者は1980年に発足した認知症の人の家族の会による介護者同士のピアサポート活動や各市町村自治体が地域支援事業(任意事業)などで実施される介護者交流会などが行われてきた。 認知症ケアによって最も課題となるのBPSDは、介護者や周囲との関係悪化や環境への不適応により出現することから、在宅生活における認知症の人と家族の関係性へのアプローチは重要である。しかし、前述の通りこれまで両者それぞれへのアプローチが中心であり関係性を支援するアプローチが不足していた。そのことから本研究では、すでにオランダ等で展開されている、統合ケアプログラムの日本への適応と開発を目指している。 1年目である2020年は、当初認知症カフェへの調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、調査予定であった認知症カフェのほとんどが休止していたため、オランダですでに実践展開されている認知症の人と家族の統合ケアプログラム「ミーティングセンターサポートプログラム」の情報を収集し文献調査を行った。その結果、サポートプログラムのモデル、構造、そして運用や既存のサービスからの転換など多くの示唆を得ることができた。今年度実施予定であった、認知症カフェの来場者への質的な評価は次年度以降、対面を伴わない方法での調査を検討し、より日本の実情に即した質が高く効果的な統合ケアプログラムのモデル構築を目指す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、今年度認知症の人と家族が同じ場を共有する5か所の認知症カフェの来場者へのヒアリング調査を実施し結果を分析した結果を、ベースラインと位置付ける予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の観点から、対象となる認知症カフェの休止、ヒアリング調査等の活動制限があり実施することができない状況であった。 文献調査は計画的に進めることができたと評価できるが、ヒアリング調査が未実施であったために「やや遅れている」として評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定であった初年度の認知症カフェ来場者である、認知症の本人と家族介護者への調査方法を見直し、確実に実施できる質問紙調査に変更して、2年目に実施する予定である。その際の調査方法は、認知症の本人には認知症カフェ運営者から代行し質問紙を用いた半構造化面接として短時間で簡易な形式で実施できる方法を用いる。また、家族介護者については認知症カフェ運営者に協力を依頼し直接手渡し、郵送で回収する方法を用いる予定である。得られたデータはテキストデータについてはテキストマイニング手法にて数量化し、社会参加の変化や新たな外出先、地域との付き合いの変化、家族関係の変化等について分析を行い認知症カフェの効果および、統合ケアプログラムとの比較データとする。 また、2年目に予定していたオランダ、イギリスへの実地調査は、新型コロナウイルス感染症の影響により渡航は困難であることが予測されるために、オンライン会議システム等を用いて代用することを検討する。さらに、国内での実証研究を行うための介護保険事業所等を中心としたイニシアチブグループ構築は計画通り実施する予定である。ただし、実施時期は新型コロナウイルス感染症の状況を見て判断する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目は、認知症カフェの来場者の対象にヒアリング調査を実施する予定であった。しかし新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響を受け実施が難しく、先行文献の収集とオランダ語翻訳を中心とした文献調査にとどまり計画通り実施することが難しく当初計画で見込んだ支出ではなかった。2年目は、1年目実施できなかったヒアリング調査を質問紙調査に変更し実施する計画である。また、オランダとイギリスへの実地調査の方法の変更も検討している。また、3年目に計画している統合ケアモデルの実証研究に向けて、介護現場職員とのイニシアチブグループ構築に向けた調査を行うことも2年目に計画している。これらが計画通り進むことで3年目までに本研究の目的である、日本版統合ケアモデルの構築を目指す。
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