研究課題
昨年度までに実施してきた,中高年ひきこもり当事者やその支援者らに対するインタビュー調査の結果から,家族側の援助要請に関する課題が,長引くひきこもりの一因になっていることが示された。そこで今年度は,中高年ひきこもりの親世代である地域高齢者を対象に,家庭の問題を主とした援助要請意図や行動に関する調査を行い,これまでに得られた成果を量的に明らかにすることを目的とした。埼玉県A市に在住の65歳から84歳までの高齢者から,住民基本台帳により1000人を無作為抽出し,自記式の郵送調査を実施した。その結果,583人(回収率58.3%)から回答を得た。調査内容は,援助要請希求や援助への抵抗感,悩み(家庭,健康,人間関係,生活全般)の頻度や度合い,それぞれの悩みに対する相談相手(行政を含む),精神的健康度,孤独感,ソーシャル・ネットワークなどであった。分析の結果,男性の方が援助を求めることに対する抵抗感が強く,悩み全体に対して援助要請行動を取らない傾向が示された。女性は男性よりも援助を求めることに対する抵抗は少ないが,健康や人間関係,生活全般などの悩みと比して家庭に関する悩みは相談する意図や行動が少なく,相談する相手も限られることが確認された。本研究では,ひきこもり当事者に対する調査から,老いへの自覚がひきこもり生活を終える要因となっていること,長いひきこもりの中で,親は,一度は相談機関や医療機関などに援助を求めていたが,うまく支援が継続されず家族全体が社会から孤立していたことが確認された。地域高齢者を対象とした調査においても,男性は援助を求めにくく,女性においては家庭に関する問題を行政を含む他者には相談しづらいことも確認された。以上を元に,親に対する支援策としてこれら明らかになった成果を元に援助養成行動につながるためのプログラムを構成した。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
老年社会科学
巻: 45 ページ: 213-224
Psychogeriatrics
巻: 24 ページ: 145-147
10.1111/psyg.13042