研究課題/領域番号 |
20K02277
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
小林 理 東海大学, 健康学部, 准教授 (80338764)
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研究分担者 |
岡部 卓 明治大学, ガバナンス研究科, 専任教授 (40274998)
西村 貴之 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 准教授 (60533263)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 基礎的なデータ収集 / 仮説検証型の調査設計 / アウトリーチ型と地域性 / 自治体運営方式と地域性 / 生活支援と利用者ニーズ / 訪問型と集合型の特徴 / 既存機関との差別化 / 連携とダイバーシティ |
研究実績の概要 |
初年度は、本研究の設計から研究目的である次の3点について、基礎的なデータ収集を中心に作業を実施した。 1)相談支援における連動性を含めた現状と課題把握については、相談員の専門性の実態、支援対象設定と支援方法の現状と課題として、文献レビューと情報収集により学習・生活支援事業の現状把握を行った。具体的には、全国の学習支援の取り組み状況と、連携先の状況との分析を行い、連携の特徴について整理を行なった。その結果、事業の拡散化、多元化に関わる仮説を導くことができた。 2)各自治体の実施状況と課題の把握については、文献と資料を対象に、運営方式、支援対象設定、支援内容の整理の観点から、分析を行なった。具体的には、自治体の運営方式における直営や委託の別と、地域性や支援ニーズの特徴との関係を整理した。ここから、実態の量的・質的な把握の必要性が明らかとなり、調査設計や調査結果を分析するモデルの整理を行なった。その結果、事業のアウトリーチ型と地域性に関わる仮説を導くことができた。 3)支援方法の開発については、今後の調査の実施により、さらに明確にしていくことになるが、訪問型に焦点を当てて、集合型との比較を行いながら、支援ニーズに合わせた支援方法を探っていく必要性が明らかとなった。具体的には、訪問型の特徴、集合型の特徴の違い、訪問型と生活支援の関係性、福祉と教育の連携、公民(事務所と事業者等)の連携の観点から支援方法の工夫を検討していく必要があることがわかった。 以上のような結果から、更なる調査を進めていくにあたり、実態把握方の調査ではなく、仮説検証型の調査設計が可能であるという方針を立てることができた。この方針により、調査先の調整と調査設計、および分析のモデルを研究会議により、生成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎的なデータ収集や調査設計は、滞りなく進めることができた。他方で、予期せぬ状況として、コロナ禍における感染状況があり、対面式の会議、実践現場の視察が難くなる状況があった。そこで、研究作業を進めるために、次の対応を取った。 1)文献調査および情報収集:研究会議については、対面式の会議を変更し、遠隔会議システムにより回数を増やして(月一回)実施した。研究代表者により、データ収集のための、調査対象候補の一覧作成と対象選定の際に必要な基礎的情報の収集および共有を行った。併せて、研究代表者および分担研究者により、学習・生活支援事業、子ども食堂、自治体の生活保護および生活困窮者自立支援制度の実施状況等についての情報収集・共有を行なった。また、研究代表者により、先行研究として行われている調査の設計や対象設定の情報が収集、共有された。さらに、研究分担者により、関連する学術論文や著作の文献収集と共有が行われた。 2)調査実施:調査の設計、分析モデルの作成を進めるために、実践現場の視察を計画していたが、断念する必要があった。そこで、同時期に、今回の研究メンバーが参画する別の研究調査の報告書(刊行済)のデータをもとに、数量的な実態の整理を行なった。これにより、調査設計と分析の方向性を検討し、倫理審査申請の手続きの準備を進めた。具体的には、文献や資料の分析により、ある程度の基礎的実態把握が行われてきている現状を整理できたことから、当初想定した実態は悪形の調査ではなく、仮説検証型の調査と分析モデルにより進めることとして、調査設計を行なった。ただし、実践現場の視察や調査協力の依頼を進める必要性から、調査の実施は、次年度に行う視察による調査設計の検証後に、実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的に合わせて、次の3点で推進方策を考えている。 1)相談支援における連動性を含めた現状と課題把握については、調査実施へ向けて、調査設計や分析モデルの検証を行うために、実践現場を訪問し、調査協力を合わせて進める予定である。ただし、社会の感染状況により、視察や訪問が制限される場合には、関東圏に絞って視察や調査の実施を行うように変更する判断を行う。 2)各自治体の実施状況と課題の把握については、文献研究と資料収集により、自治体の状況の把握や運営方式と連携の課題の明確化が進んできていることから、運営方式の類型化をもとに、対象を絞って、更なる情報取集を行なっていきたい。その際、地域性と訪問型事業に焦点を当てることにより、より学習・生活支援事業の特徴を具体化することができると考えている。自治体のさらなる調査で社会の感染状況により研究作業に制限が出る場合には、研究代表者と研究分担者の所在する自治体に対象を限定して対応する工夫をとることとしたい。 3)支援方法の開発については、広く、全国の多様な事例収集により、支援ニーズや支援方法の検討の精度が上がると理解している。従って、訪問型に焦点化して、アウトリーチの特徴の分析に焦点化して、進めていくことが有効と考えられる。集合型の支援方法の特徴については、訪問型との差や比較により、より効率的に、支援方法の開発が進められると考える。支援方法の開発については、各自治体や地域の事業者の意見を聞きながら進めていくことが望ましいが、社会の感染状況により、作業が制限される場合に備えて、上記、1)や2)と同様の対象地域を限定して進める対応を取ることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、子どもの学習支援・生活支援事業について、全国の特徴的な自治体における代表的な事業者を訪問し、実践の状況について視察を行い、実態把握の調査の設計へ活かす予定であった。しかしながら、新型ウイルスによる感染状況から、感染拡大防止の観点から、訪問先の事業者が、現場の実践が一時中断したり、開催が見送られたり、また、他県等からの訪問を見送ることとなったことから、現地視察を延期せざるを得ない状況となった。このため、視察に要する旅費、謝金、その他の関連する費用等の予算が計画通りに執行できなかった。 なお、これらの費用については、引き続き、感染状況と訪問先の受け入れ方針を見ながら、引き続き、視察の機会を伺うこととすることから、予算通りの執行を見込んでいる。
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