研究課題/領域番号 |
20K02281
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
大谷 京子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (90434612)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 精神障害 / 啓発プログラム / 効果測定 / スティグマ態度 / 社会的距離 |
研究実績の概要 |
2021年度も、新型コロナウィルス感染症拡大のため、先進事例の参与観察はできなかった。そこで、A地域自立支援協議会精神障害者地域生活支援部会啓発チーム(以下、A啓発チーム)と共に、「ヒューマンライブラリー」を通して、精神障害の啓発活動をする研究者の実践報告をうかがう講演会を開催した。A啓発チームのプログラムには組み込みにくい「交流」を重視しており、理解だけでなく態度や行動変容も期待できると考えられる。A啓発チームの実践は、中学・高校・大学等で大人数を対象にすることが多いため、いかに少人数で実施する濃密な交流体験を組み込むかは検討の余地があると考えられる。 啓発プログラム実践の効果測定については、高校生を対象には継続できたため、3年目が終了した。同じプログラムによる実践をしており、3回とも精神障害者へのスティグマ態度は軽減させ、社会的距離を縮めることもできた。啓発プログラム実践前後で、「スティグマ態度」「精神障害者との関わりにくさ」「恥意識」はすべて有意に低下した。「社会的距離」も有意に近くなった。意識の変化を促進する効果を得られるプログラムであることは検証できたが、これが態度や行為の変容につながるかは未知数であるため、今後さらに異なる尺度による評価が求められる。 ただ、対象者もまじえたシンポジウムを行うため、その話の内容はライブで進み毎回異なる。そのため、効果についてはばらつきがある。毎回同じことを同じように伝えるプログラムにすれば、同じ効果が得られるかもしれないが、プログラム実践をする側も年々思考が深まり成長するため、同じものを同じように行うことは不可能であり、抵抗もある。EBPの限界を感じている。 今年度も、A啓発チーム内の会議も対面人数を制限し、インタビューの実施もかなわなかったため、プログラムに追加すべき要素抽出もできていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナウイルス感染症拡大のため、例年実施できていた啓発実践が今年度も行えなかった。また、先進事例の参与観察についても、同じ理由で実施できなかった。地域自立支援協議会精神障害者地域生活支援部会啓発チーム会議も、オンライン会議になり、啓発プログラムの検討をするための時間が取れなかった。
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今後の研究の推進方策 |
対面でのプログラム実施、インタビュー調査を志向していたが、オンラインを活用した方法を遂行する。有効な啓発プログラムの要素抽出のためのインタビュー調査についても、グループでの集合が難しければ、個別インタビューに切り替えたり、オンラインを活用したり、感染症対策を踏まえた方法で実施する。海外の事例、国内の先進事例に造詣の深い研究者の講演を依頼する。 啓発プログラムについては、オンラインに変更されたとしても、それを録画し、普及のための材料を収集していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
啓発プログラム実践が制限されたため、録画をするチャンスがなかった。そのために購入を予定していたビデオカメラと周辺機器の購入をしなかった。また、グループインタビューを予定していたが、集合が難しかったため、会議費、インタビュー調査謝礼も支払わなかった。 2022年度は、グループインタビューが困難だと判断されれば個別インタビューに切り替える。また、啓発プログラム実践がオンラインでの開催になったとしても、それを録画する方法を模索する。普及のための動画を蓄積する予定である。
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