研究課題/領域番号 |
20K02287
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研究機関 | 静岡県立大学短期大学部 |
研究代表者 |
加藤 恵美 静岡県立大学短期大学部, 短期大学部, 助教 (50381314)
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研究分担者 |
井上 孝代 明治学院大学, 国際平和研究所, 名誉教授 (30242225)
伊藤 武彦 和光大学, 現代人間学部, 教授 (60176344)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | あいまいな喪失 / 離婚 / 保育所 / 保育士 / トラウマケア / レジリエンス / テキストマイニング |
研究実績の概要 |
2020年度計画は、「親と離別した幼児の喪失・トラウマ体験への支援」の方策を開発することを目指し、親と離別した保育園児への保育士の個別的支援の実態を明らかにする質問紙調査および離別(あいまいな喪失)に伴う喪失体験児のレジリエンスを高めるための専門的知識・スキルを学ぶ保育士向け体験型研修の開発を行うことであった。具体的には、保育士を対象とした(1)保育現場における喪失体験児の存在の実態について、(2)トラウマケアの実施体験の有無について、(3)喪失体験児のトラウマケアに関するコンピテンシーの現状について質問紙を作成し、(4)静岡県の全ての保育所を対象とした質問紙調査を実施する。そして、調査結果の分析は多変量解析およびテキストマイニングを用いて、保育士の喪失体験児のトラウマケアのコンピテンシーや、それに応じた子どもの変化の捉え方及び関わり方とその意識についての知見を得ることであった。 2020年度の研究実績としては、新型コロナウイルスの影響により、静岡県内全ての保育所を対象とした質問紙調査実施は見合わせた。支援法開発に向けた調査として2018年度に実施(JSPS科研費17K04297)した静岡県内社会福祉法人保育所保育士を対象とした喪失体験児保育の現状と意識に関する質問紙調査の量的分析結果を精査した。「親の離婚を体験した子どもの支援に関する保育士の意識調査:現職・保育学生を対象とする“あいまいな喪失”体験児への支援教育プログラム構築に向けて」と題して論文にまとめた。とりわけ保育士の喪失体験児のトラウマケアのコンピテンシーについての意識と実践の関係性や、調査結果の実践的意義と理論的意義が明らかとなり、支援法開発の基盤となる成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画は、「親と離別した幼児の喪失・トラウマ体験への支援」の方策を開発することを目指し、親と離別した保育園児への保育士の個別的支援の実態を明らかにする質問紙調査、および離別(あいまいな喪失)に伴う喪失体験児のレジリエンスを高めるための専門的知識・スキルを学ぶ保育士向け体験型研修の開発を行うことであった。具体的には、保育士を対象とした、(1)保育現場における喪失体験児の存在の実態について、(2)トラウマケアの実施体験の有無について、(3)喪失体験児のトラウマケアに関するコンピテンシーの現状について質問紙を作成し、(4)静岡県の全ての保育所を対象とした質問紙調査を実施する。そして、調査結果の分析は、多変量解析およびテキストマイニングを用いて、保育士の喪失体験児のトラウマケアのコンピテンシーや、それに応じた子どもの変化の捉え方及び関わり方とその意識についての知見を得ることであった。 進捗状況としては、新型コロナウイルスの影響により、静岡県内全ての保育所を対象とした質問紙調査実施は見合わせた。支援法開発に向けた調査として2018年度に実施(JSPS科研費17K04297)した、静岡県内社会福祉法人保育所保育士を対象とした喪失体験児保育の現状と意識に関する質問紙調査の多変量解析による量的分析結果を精査した。「親の離婚を体験した子どもの支援に関する保育士の意識調査:現職・保育学生を対象とする“あいまいな喪失”体験児への支援教育プログラム構築に向けて」と題して論文にまとめた。保育士の喪失体験児のトラウマケアのコンピテンシーについての意識と実践の関係性や、調査結果の実践的意義と理論的意義が明らかとなり、体験型研修開発の基盤となる成果を得ることができた。現在質問紙調査のテキストマイニング分析および質的分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の計画は、保育士対象の喪失体験児のトラウマ体験への「予防的・発達的」視点に立った「グループ表現セラピー」を用いた体験型研修の開発と実施であった。具体的には、(1)「保育士自身の喪失の気づき・喪失の専門知識とスキルの体験型研修の改良と実施、(2)先駆的実践団体(米国)での支援者養成プログラム受講、知見の体験型研修への応用、(3)親との「離別(あいまいな喪失)」に伴う個別性に即した子どものレジリエンスの高め方の専門的知識・スキルを学ぶ体験型研修の開発と実施である。 今後の計画としては、新型コロナウイルスの影響により、米国の先駆的実践団体での支援者養成プログラム受講が困難であることが予想される。現実的な計画として、オンラインでの国際会議開催を2021年7月に予定している。「パンデミック下の子どもの現状と心理社会的支援:あいまいな喪失の視点から」と題し、トラウマケアやパンデミックへの先進的な取り組みを行っているイスラエルの研究者、シンガポールで心理社会的支援を行う心理職の方、米国で先駆的な子どものグリーフケアプログラムを主宰する実践家の方々と、支援の現状および今後の支援の方策について意見交換を行う。海外での支援者養成プログラム受講は、長期的な計画をもって進めていく必要がある。 また、体験型研修の開発に向けて、保育士対象の質問紙調査結果における喪失体験児保育上の困難と支援の意識に関する自由記述内容についてのテキストマイニング分析および質的分析を2021年度中にまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の問題で、年度内物品費、旅費、人件費・謝金、その他の経費を来年度に繰り越すため。
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