本研究は、人口減少時代における福祉のあり方を構想していくにあたっては、狭い意味での福祉の領域のみに視野を限定するのではなく、まちづくりや都市・交通政策、経済政策、環境・文化等、他領域との有機的な総合化を図っていくことが不可避との認識に立ち、人口減少社会における福祉と他領域との政策統合のありようを、地域の特性にそくした具体的政策レベルから理念・社会構想のレベルまでを含め、新たな方法論上の試みも加える形で探究するものである。そして、1)政策・地域のレベル:自治体の類型に応じた課題の抽出と有効な政策対応の調査・分析、2)方法論のレベル:AIを活用した未来シミュレーション分析と政策提言、3)経済・主体のレベル:「倫理・福祉と経済の再融合」に関する研究という3つの柱にそくして調査研究を進めた。 研究期間を通じ、岩手県、山口市、長野県等に関するAI活用の分析を進め、長野県においてはそのシミュレーション結果が県の総合計画策定に活用された。また、よりミクロレベルの施策における「環境・経済・社会」の三者を視野に入れたシミュレータの開発を行い、かつそこでの社会的インパクト評価の枠組み作りに着手すると同時に、より具体的な実践レベルについて、商店街ないし中心市街地再生(エリア・リノベーション)と耕作放棄地活用に注目した訪問調査や共同研究を進め、著書(『コモンズとしての商店街』(仮題))としての刊行に向けた作業を行った。
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