研究実績の概要 |
我が国の65歳以上の高齢者数は3459万人で総人口に占める割合は27.3%と超高齢社会である。また2012年時点で全国の認知症有病率を15%と推計し、認知症高齢者数を推計約462万人とし、軽度認知障害(MCI : Mild Cognitive Impairment )の高齢者も推計約400万人と報告している。こうした状況に加えて、近年、晩婚化・晩産化等を背景に、育児期にある者(世帯)が親の介護も同時に引き受けるという、「育児と介護のダブルケア(以下、「ダブルケア」という)。」が問題視されている。ダブルケアを行う女性の有業者は約48%、無業者は約51%で、無業者のうち就業を希望しているのは約63%であり、就業意欲があるといえる。しかしながら、平成27年度の調査では、親の介護を理由とした離職者は約90,100人で、平成12年度から増加傾向にある。そこで本研究では、仕事を持つ女性の未就学児の育児と認知症の親の介護のダブルケアの実態を明らかにすることを目的とした。育児と介護のダブルケアを実施しているダブルケア者3名にインタビュー調査を実施した結果、「優先度をつけるダブルケアの実践」をしていた。具体的には、「最優先の育児」「がんばらないで、割り切る介護」「優先せざるを得ない介護」「1人になる時間はあきらめる」といった様相が抽出された。ダブルケア者への支援として、「職場の協力体制の確立」「家族の理解促進と相談・支援者のネットワーク構築」「自分の時間の確保・休息への支援」「三位一体(育児・介護・仕事)の就業支援」などが必要であることが明らかになった。
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