研究課題/領域番号 |
20K02297
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
渡邊 かおり 愛知県立大学, 教育福祉学部, 准教授 (70595438)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 社会事業 / 治安維持法 / 検挙索引簿 / 特高月報 / 社会事業研究所 / 天達忠雄 |
研究実績の概要 |
2021年度は主に2つのテーマについて取り組んだ。1点目は、特高第一課が作成した「検挙索引簿」第2号及び第3号を分析し、社会事業関係者がいつどのような理由で検挙されていたかについて明らかにすることである。「検挙索引簿」は戦後GHQによって接収され、1974年に日本に返還された公文書であり、「検挙索引簿」第2号は1933年から1937年まで、そして「検挙索引簿」第3号は1938年から1945年までのデータとなっている。検挙理由については、「検挙索引簿」第3号に「検挙件名」として掲載されており、これを『特高月報』の「犯罪被疑事実」と比較したところ、記述が異なっている複数の人がいることが分かった。この研究結果については、次年度に学会で発表予定である。 2点目は、社会事業研究所所員として検挙された天達忠雄が、獄中で密かに作り続けた短歌をまとめた『幽囚の歌』の分析を行ったことである。『幽囚の歌』で複数回詠まれたテーマは、大きく分けて「短歌」、「花」、「食べ物」、「書籍」、「空襲」、「戦況」、「生」、「死」、「人間関係」、「父」、「母」、「妻」、「仕事」、「季節・自然」等であるが、2021年度は、「短歌」と「花」のテーマを分析した。天達は「うた作り始めし日より捕はれの時の歩みは早くなりたり」と詠み、短歌を作ることが生きがいになっていた。そして、花も天達の生活にとって不可欠なものであり、「花はよし花を飾れば濁りたる心は澄めり魂(たま)もめざめき」と、花を飾ることで天達の心は安らいでいた。監房や独房において、天達はささやかな楽しみを見つけて生活に張り合いを持たせ、命をつなごうとしていたことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、県外での史資料収集が中止になったこともあり、収集予定の史資料が集められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に取り組んだ特高第一課の「検挙索引簿」分析結果については、2022年度春の社会事業史学会で発表予定であり、引き続き論文として書き進める予定である。また、新型コロナウイルス感染症の状況が落ち着いたタイミングを見計らって、県外での史資料収集を進めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により出張が中止となり、旅費を使用しなかったため、次年度に繰り越した。2022年度は物品費を主に書籍の購入に、出張が可能なタイミングで史資料収集のために旅費を使用する。
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