研究課題/領域番号 |
20K02304
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
山本 理奈 成城大学, 社会イノベーション学部, 准教授 (50708500)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 都市 / 住宅 / 政策 / 高齢者 / 生活支援 / 在宅ケア / 居住福祉 |
研究実績の概要 |
本年度は、豪州における高齢者在宅ケアシステムに関する資料収集及び調査を実施した。その結果、「consumer directed care(CCD)」に関して、身体的な不自由の領域だけではなくメンタルヘルスの領域においても、制度改革が行われていることが明らかとなった。その背景には、従来の施設収容型の実践や専門家による意思決定が問題視されるようになったという経緯がある。換言すれば、人びとの「living/lived experiences」が重視されるようになり、個人の意思決定を尊重する方向への転換が、ケアを必要とする本人だけではなく、その家族や介護者からも求められるようになったことが関係している。 そして現在、この改革の中心となっているのが、PPC(person-centred care)及びCCDである。一般に、前者はプロバイダ主導型ケアとして、後者は消費者主導型ケアとして認識されている。PPCは公的医療システムのアプローチであり、具体的にはpublic health serviceを含む。これに対しCCDは、消費者の選択と管理の最大化を指向するものであり、具体例としてはNDI(National Disability Insurance Scheme)のサービスがあげられる。NDIとは、オーストラリア連邦政府による資金提供の制度であり、個人/介護者が資金を管理し、必要なサポートの利用を可能にする制度である。 これに対し日本では、高齢者特有の精神的な問題と在宅ケアサービスの連携について、まだ十分な支援体制が整っているとはいえない段階にある。たとえば、高齢期うつ病などは、認知症と混同される場合も多く、その在宅ケアの困難さや個別の状況に見合った居住環境の改善など、課題も多い。それゆえ、こうした豪州の先端的な取り組みは、わが国の政策的課題を検討するうえで参考となるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、COVID-19による渡航規制が解除されたため、豪州における高齢者在宅ケアシステムに関して、現地での資料収集及び調査を進めることができたため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまでの研究成果をふまえ、国内外の研究者との情報交換、及び口頭発表や学術論文の国際的な発信に注力していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、2020年度および2021年度は、現地での資料収集および聞き取り調査を行うことが不可能となり、次年度使用額が生じることとなった。それゆえ、当初の研究計画に従い、豪州および日本国内における調査関連費用への充当を中心として、使用することを計画している。
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