研究課題/領域番号 |
20K02306
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
明石 留美子 明治学院大学, 社会学部, 教授 (00535396)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 母親の就労 / ワーキングマザー / 子ども / 子どもの発達 / 家族 / ワークライフバランス |
研究実績の概要 |
2021年度は、文献研究を中心に研究活動を実施した。本研究は「母親の就労と子ども:母親の養育役割認識と就労の子どもへの影響」をテーマとしており、21年度は母親の就労と子どもの成長の関係性を見出す基盤として、文献や各種データをもとに分析を進めた。近年、子どもに関わる問題が増加していることから、第一に、子どもが直面している問題として、児童虐待、不登校、若年無業者など、子どもの成長にマイナスの影響を及ぼす状況について明らかにした。第二に、子どもは家庭において家族とともに生活することが基本にあることから、家族構造や家族機能の変化と離婚の動向など、子どもに影響を及ぼす家族の課題を分析した。第三に、女性、とりわけ母親の労働参加の動向を追跡し、近年、正規雇用・非正規雇用とも増加の傾向が見られる一方で、正規雇用率は乳児期の末子を持つ母親よりも、学童期以降の末子を持つ母親の方が低いことがわかった。こうした知見は、正規雇用での再就職の困難さの一方で、子どもが成長していくにつれ、母親は子どものケアをどう認識していくのかを分析する意義を示唆する。21年度は、以上の3つの領域の分析をまとめた論文を発表した。 本研究では母親の就労率が高いアメリカからも知見を得ることを目的としているため、21年度は、アメリカの女性・母親の就労状況とワーキングマザーの育児・養育意識について、文献研究やデータ分析への取り組みを始めた。加えて、母親が就労と育児の両立に意欲を持ち続けるには、母親自信が生活に満足しウェルビーイングを感じていくことが重要となることから、21年度には、共通した定義が存在せず、様々な変数で測定されてきたウェルビーイングと幸福についても概念整理を行った。 次年度は母親の養育役割・就労と養育役割認識を結び付けることにより、母親の就労が子どもに及ぼす影響について見出す計画であるため、同領域の文献研究を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度は、就労と育児を両立しているワーキングマザーを対象としたフォーカスグループによる質的調査を計画していたが、コロナ禍の影響により、育児中の母親への対面調査は控えなければならなかった。また、日本国内の専門家や少年院などの子ども関連施設への訪問による聴き取り調査、アメリカの研究者への聴き取り調査も計画したが、同様の理由で断念せざるを得なかった。したがって文献研究を中心に研究を進めたが、当初の計画通りの研究を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度もコロナ禍の収束が見込めないため、母親を対象としたフォーカスグループは計画せず、インターネットによる大規模な量的調査へと研究方法を変更する。コロナ禍の状況を見ながら、国内の子どもの保護や発達の専門家や育児・母親支援者への聴き取り調査をオンラインまたは訪問によって実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、予定していたフォーカスグループを実施することができず、調査協力者への謝礼金が発生しなかった。また、アメリカに渡米して研究者に聞き取り調査を行う予定であったが、コロナ禍により渡米がかなわなかったため、旅費や謝礼金が発生しなかった。コロナ禍の収束の見通しが立たないため、次年度は研究計画を変更し、大規模なインターネット調査及び国内の関連施設や専門家への訪問調査を行う予定である。
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