研究課題/領域番号 |
20K02308
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研究機関 | 中部学院大学 |
研究代表者 |
福地 潮人 中部学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (00412833)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スウェーデン / 障害者 / 社会保障 / 障害者年金 / 障害者雇用 / 賃金補助金制度 / 2017年改革 |
研究実績の概要 |
当該年度はコロナ禍により研究対象国であるスウェーデンでの現地調査を実施できなかった。よってやむを得ず、スウェーデン雇用安定局や社会保険庁の年次報告書など日本国内でも入手できる資料を分析し、研究を進めた。その成果については、以下の2点の学術論文としてまとめることができた。 1)「スウェーデンの障害年金制度」『賃金と社会保障』1751, pp. 30-42. 2)「障害者に対するアクティベーション政策: スウェーデンの賃金補助金制度を事例に」『北ヨーロッパ研究(北ヨーロッパ学会学会誌)』17(1), pp.23-35.(近刊) 1)では、2000年代初頭の改革以降のスウェーデンの障害者年金の現状を把握した。その結果、同国の障害者年金には就労を促す仕組みが内包されていることが明らかになった。また、近年では重度障害者向けの年金である「疾病補償」の新規裁定者数が激減しているなど、同国政府の緊縮策が機能不全を招いていることもわかった。 2)では、スウェーデンの障害者雇用施策の柱の一つである賃金補助金制度について、とくに2017年改革の内容を中心に把握した。その結果、賃金補助金制度は同国の働く障害者を支える重要な施策であるが、①ロックイン効果(=カプセル効果)を持っている点や、②使用者の不正取得という問題を抱えていることがわかった。また①の問題に関して、2017年改革では、軽度障害者の教育訓練的側面が一層強化される一方で、重度障害者にも配慮したバランスのとれた施策が提示された。しかしながら、②の問題に関しては、給与支払いのデジタル化が原則とされた程度であり、十分な対策となっていないことが明らかになった。 以上のような成果を踏まえつつ、現在はスウェーデンの障害者福祉と雇用の「リバランス」がどのようなタイミングと形式で行われてきたのか分析を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上述のような一定の成果があったとは言え、やはり現地調査が実施できなかったことが最大のマイナスポイントである。研究代表者は当該年度当初より、常々渡航の機会を窺っていたが、同国では日増しに新型コロナウィルス感染者数が増え、年末には1万人を超した。死亡率も日本の20倍にまでなり、年度内の渡航は現実的ではなくなった。旅費や滞在費、通訳・コーディネート費を中心に組まれた本研究計画上の予算の執行状況も、予定の約4割に留まってしまった。以上から、研究計画の遂行は大幅に遅れていると判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
スウェーデンではワクチンの接種が進んでおらず2021年5月11日時点でも接種率は全国民の8.6%に留まっている。ワクチンの効果に期待ができないわけではないが、今年度の現地調査の可能性についても予断を許さない状況であると言える。万が一のために、今年度はZoomなどを使ったオンラインによるインタビュー調査の可能性を検討したい。可能な限り早急に調査計画の修正案を立案し、コーディネーターへの依頼を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍により、スウェーデンへの渡航および現地調査が実施できなかったため、当初予算中の旅費および滞在費を使用しなかった。2021年度はこれらの予算について、主に現地コーディネータのオンライン調査コーディネート代および通訳費として使用することを考えている。
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